ベトナムの不動産市場において、高額な不動産物件を細分化して複数の投資家から資金を募る「不動産 小口 化」は、新たな投資手法として注目を集めています。しかし、このスキームは現行の法的枠組みにおいて複雑な解釈を伴い、特に投資家保護や資産の所有権帰属を巡る法的リスクが内在しています。本稿では、最新の2024年土地法、2023年不動産事業法、2015年民法、および最高裁判所の判例に基づき、不動産小口化の法的構造と実務上の重要論点を詳細に分析します。
1. 不動産小口化の定義と法的枠組み
ベトナムにおける不動産小口化は、主に「投資協力契約(Hợp đồng hợp tác đầu tư)」や「資本動員(Huy động vốn)」、あるいは「社債発行」の形式で行われます。これらは、不動産プロジェクトの事業主が資金調達を目的として、未完成の物件(将来形成される資産)の権利を分割して提供するものです。
実務上、においては、これらの契約が単なる金銭貸借なのか、あるいは不動産持ち分の譲渡なのかを厳格に区別する必要があります。2023年不動産事業法および2024年土地法は、不動産を事業として扱うための厳格な要件を定めており、これらを遵守しない小口化スキームは、法的に無効とされるリスクがあります。
2. 資本動員の適法性と2023年不動産事業法
不動産プロジェクトにおける資金調達(資本動員)は、不動産事業法および住宅法によって厳格に規制されています。
2023年不動産事業法第24条によれば、将来形成される住宅や建設物件を販売・賃貸購入(リース分譲)するためには、以下の条件を満たさなければなりません。
- 建設工事が着工されていること。
- 土地使用権に関する証明書(レッドブック等)を保有していること。
- プロジェクトが管轄当局によって承認され、進捗通りにインフラが完成していること。
- 販売前に、管轄の建設局から販売資格( đủ điều kiện bán)の書面による通知を受けていること。
多くの小口化スキームでは、これらの条件を満たす前に投資家から「予約金」や「預託金」を徴収するケースが見受けられますが、2023年不動産事業法第23条第5項は、販売資格を得る前の予約金徴収を物件価格の5%以内に制限しており、違反した場合は契約が無効となる可能性があります。
3. 投資協力契約と「仮装取引」のリスク
不動産小口化で多用される「投資協力契約」が、実際には不動産売買を隠匿するためのものである場合、2015年民法第124条に基づく「仮装取引(Giao dịch giả tạo)」として無効を主張されるリスクがあります。
民法第124条第2項は、「第三者に対する義務を逃れるために、または別の取引を隠すために虚偽の取引を行った場合、その虚偽の取引は無効である」と規定しています。
例えば、裁判所は、実際の合意内容と公証を受けた契約書の価格が著しく異なる場合や、返済義務を免れるために資産を移転した取引を「虚偽」とみなして無効としています。投資家が特定の区画や部屋の権利を「保有」していると信じていても、契約の実態が法的な所有権移転要件(土地法第167条に基づく公証・登記)を満たしていない場合、プロジェクトが頓挫した際に債権者としての地位しか認められない恐れがあります。
4. 外国人投資家の参入制限と法的保護
外国人投資家が不動産小口化スキームに参加する場合、2023年住宅法および土地法の規制を遵守しなければなりません。
2023年住宅法(および2020年改正住宅法)第159条によれば、外国人がベトナムで住宅を所有できるのは、商業住宅建設プロジェクト(マンション等)の購入、賃貸購入、相続、贈与に限られます。また、国防・安全保障に影響を与える区域での所有は禁止されています。
の実務では、外国人が直接土地を保有できない制限を回避するために、ベトナム人名義を借りる「名義貸し」が行われることがありますが、これは極めて危険です。最高裁判所の判例第02/2016/AL号は、名義を借りた側が資金を拠出したことを証明できる場合、その拠出額に基づいた価値の分配を認めていますが、一方で、名義を貸した側の貢献度も考慮されるため、投資額全額の回収が保証されるわけではありません。したがって、合法的な投資ビークル(法人)を通じた小口化スキームの構築が推奨されます。
5. 善意の第三者の保護と民法第133条
小口化された不動産が転売されたり、事業主によって第三者に二重譲渡されたりした場合、投資家は民法第133条の「善意の第三者(Người thứ ba ngay tình)」の保護規定を検討する必要があります。
2015年民法第133条第2項は、登記済みの資産について、当局の登録情報を信じて取引を行った善意の第三者を保護します。
判決第26/2020/DS-ST号などの裁判例では、取引が一度無効とされた場合でも、その後の転得者が善意かつ無過失であり、適法に登記を行っている場合には、その所有権が維持されることが確認されています。しかし、プロジェクトの係争を知っていた投資家や、法的な調査(デューデリジェンス)を怠った投資家は、この保護の対象外となるため、不動産 強い 弁護士による事前調査が不可欠です。
6. 利益分配と住宅法第39条の規制
不動産小口化における最大のリスクの一つは、将来的な利益分配の方法です。
2015年住宅法第69条および2023年住宅法第114条の指針となる政令99/2015/NĐ-CP第19条によれば、主債務者(事業主)は、投資協力者に対して「利益の分配(金銭または株式)」を行うことは可能ですが、「住宅製品の分配」や「特定の住宅の優先購入権」を分配することは、新たな法人が設立されない限り原則として禁止されています。
したがって、投資家が将来的に物理的な不動産(部屋)を受け取ることを約束する小口化スキームは、現行法において「不可能な履行」とみなされ、民法第425条に基づき契約が解除される原因となり得ます。投資協力契約を締結する際は、分配されるのが「金銭的な利回り」なのか「現物」なのかを、現行法の規制に照らして精査しなければなりません。
7. 紛争解決における裁判所の判断基準
不動産小口化に起因する紛争が発生した場合、裁判所は以下の要素を重視して判断を下します。
- 契約の真正性と意思表示: 署名や指印が本人のものであるか、詐欺や強迫がなかったか。
- 義務の履行状況: 投資家が代金の3分の2以上を支払っているか(民法第129条の適用可否)。
- 行政手続きの完備: 土地使用権証明書の発行、公証の有無、不動産事業としての登録。
- 共有資産の処分権限: 夫婦の共有財産である場合、配偶者の同意があったか(判例第04/2016/AL号の準用)。
裁判例第330/2024/DS-PT号では、形式的に有効な契約であっても、実態として税逃れや債務回避の目的がある場合は、公序良俗に反するものとして無効とされています。小口化投資において、非公式な書面や「手書きの領収書」のみで取引を行うことは、紛争時に立証が困難になるため避けるべきです。
8. 結論と実務的提言
ベトナムにおける不動産 小口 化は、少額から不動産市場に参加できる魅力的な手法ですが、その法的根拠は脆弱であり、複数の法律が複雑に交錯しています。投資協力契約の形式をとる場合でも、実質的な「将来形成資産の販売」とみなされることが多く、その場合は不動産事業法の厳しい規制を受けます。
資産を守り、不測の事態を回避するためには、最新の土地法改正や判例の動向を熟知した専門家に相談することが重要です。契約書のリーガルチェック、プロジェクトの法的デューデリジェンス、および登記情報の確認を怠らないことが、安全な投資を実現するための唯一の道と言えるでしょう。各事案の特性に応じた法的構成を構築し、透明性の高いスキームを維持することが、投資家と事業主双方の利益を最大化する鍵となります。
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