ベトナム就労ビザ更新でつまずく日系企業のほとんどは、ビザそのものではなく労働許可証の側で遅れています。就労ビザと一時在留許可証は労働許可証の有効期間に縛られるため、順番と逆算を間違えると駐在員が出国を迫られます。本稿は、実際の裁判例で何が争われたかを先に示し、続いて現行法の期限と手順、最後に社内で決めておくべきことを整理します。
1. 判例:ビザと在留許可は労働契約の帰属で決まる
労働事件控訴審判決第01号(2025年8月18日・最高人民裁判所ホーチミン市控訴法廷。第一審は第07/2024/DS-ST号、2024年6月4日・ホーチミン市人民裁判所)では、出向していた外国人従業員が、ベトナム子会社に対して労働許可証および一時在留許可証の取消通知の無効と再取得を請求しました。
裁判所は、当該従業員が親会社の従業員としてベトナム子会社へ派遣された者であり、ベトナム子会社との毎年の労働契約は労働許可証申請の要件を満たすために締結されたものだと認定。給与は親会社から本人口座へ支払われ、親子間には給与支払いを取り決めた協力契約が存在していました。帰任命令も適法とされ、取消の無効請求を含む全請求が棄却されています。
実務上の含意は明快です。就労ビザ・在留許可は「誰の従業員か」という実体に紐づくため、出向者については、出向指示書・給与負担の合意・ベトナム側労働契約の三点が矛盾しないよう毎年点検する必要があります。ビザ更新の時期は、その点検を制度的に組み込む好機です。
2. ベトナム就労ビザ更新の前提:労働許可証の期限
根拠は政令第219/2025/NĐ-CP号(2025年8月7日施行)。旧政令第152/2020/NĐ-CP号の外国人労働者に関する規定を置き換えています。
| 項目 | 現行 | 根拠 |
| 労働許可証の有効期間 | 契約等の期間に応じ、2年を超えない | 第21条 |
| 更新申請の受付 | 満了日の45日前から10日前まで | 第28条第1項 |
| 更新の審査 | 10営業日以内 | 第28条第3項 |
| 更新の回数 | 1回限り、最長2年 | 第29条 |
| 免除確認書の発給 | 5営業日、通知は開始の3営業日前まで | 第10条 |
3. 更新の順番:労働許可証 → 就労ビザ → 一時在留許可証
- 労働許可証の更新を満了45日前〜10日前に申請し、10営業日で取得する。
- 更新された労働許可証を根拠に就労ビザを切り替える。
- 一時在留許可証を申請する。労働許可証の残存期間が上限になるため、労働許可証が短ければ在留カードも短くなる。
この順番は入れ替えられません。逆算すると、労働許可証の満了2〜3か月前には社内で動き始めるのが現実的です。健康診断書、犯罪経歴証明書、本国書類の領事認証(政令第219/2025号第5条)に時間がかかるためです。
4. 5年目以降をどう設計するか
労働許可証の更新は1回限り、更新後も最長2年(第29条)。したがって連続就労は原則2年+2年=4年が上限で、その先は新規発給のやり直しになります。ベトナム就労ビザ更新を毎年の作業として捉えていると、4年目の終わりに突然「更新できません」と言われることになります。任期を4年超で組む場合は、着任時点で新規再取得のスケジュールまで引いておくべきです。
5. よくある失敗
- ビザの残存日数だけを見る——実際の制約は労働許可証の側にあります。
- 旧政令の日数で逆算する——「5日前まで」「審査5営業日」は旧制度。現行は10日前締切・10営業日。
- 求人公告を省く——更新にも申請5日前までのベトナム人向け公告が条件です。
- 勤務地や職位の変更を更新で処理しようとする——記載事項の変更は再発給、場合により新規発給が必要です(第20条・第23条)。
- 出向関係の書面が古いまま——判例のとおり、紛争時に効くのは書面の整合性です。
6. Unilawのサポート
Unilawは、労働許可証の更新から就労ビザ、一時在留許可証、出向契約と労働契約の整合性確認までを一つの窓口で扱います。ベトナム就労ビザ更新は、満了3か月前のご相談が最も安全です。
あわせて確認したい実務ガイド
個別の論点は下記の記事で詳しく扱っています。
本稿は2026年9月時点の法令に基づく一般的な解説であり、個別案件についての法的助言ではありません。引用:労働法第45/2019/QH14号、政令第219/2025/NĐ-CP号、労働事件控訴審判決第01号(2025年8月18日・最高人民裁判所ホーチミン市控訴法廷)。

