ベトナム就労ビザ取得日数は、ビザ単体では決まりません。労働許可証を取り、それを根拠にビザへ切り替え、さらに一時在留許可証を申請するという順番があり、各段階に法定の待ち日数があるからです。2025年8月7日施行の政令第219/2025/NĐ-CP号により日数そのものが変わったため、旧政令第152/2020/NĐ-CP号を前提にした社内の逆算表は使えません。本稿は、実際の裁判例で何が争われたかを先に示し、続いて現行法の日数と逆算表、最後によくある失敗を整理します。
1. 判例:許可証と在留カードは「実質的な使用者」に紐づく
労働事件控訴審判決第01号(2025年8月18日・最高人民裁判所ホーチミン市控訴法廷。第一審は第07/2024/DS-ST号、2024年6月4日・ホーチミン市人民裁判所)では、親会社から在ベトナム子会社へ出向していた外国人従業員が、子会社と毎年締結していた労働契約を根拠に賃金等を請求し、あわせて労働許可証と一時在留許可証の取消通知の無効と再取得を求めました。
子会社側は、毎年の労働契約は労働許可証の申請書類に労働契約が必要だから締結していたものであり、実質的な労働関係は親会社との間にあると主張。裁判所は、出向元との労働契約、給与の実際の支払元、親子間の給与支払いに関する協力契約などから子会社側の主張を認め、帰任も適法として全請求を棄却しました。
出向者を送る企業にとっての含意は明確です。取得日数を短縮する以上に重要なのは、出向指示書・給与負担の合意・ベトナム側労働契約の三者が矛盾しないことです。書類の整合性が崩れていると、申請段階で差し戻され、結果として日数が倍になります。
2. 法的根拠と法定日数
根拠は政令第219/2025/NĐ-CP号(2025年8月7日施行)および労働法第45/2019/QH14号です。
| 段階 | 法定の日数 | 根拠 |
| ベトナム人向け求人公告 | 申請書提出の5日前まで(労働法第11条第1項に基づく公告) | 発給・更新の条件 |
| 需要説明報告 | 独立手続ではなく申請書類(様式第03号)に統合 | 第18条第1項 |
| 労働許可証の申請 | 就労開始予定日の前60日以内、かつ10日前まで | 第22条第1項 |
| 労働許可証の発給 | 書類受理から10営業日以内 | 第22条第3項 |
| 免除確認書の発給 | 5営業日(確認書不要の類型は開始の3営業日前までに通知) | 第10条 |
| 提出方法 | 国家公共サービスポータルでのオンライン提出が原則 | 第6条 |
| 労働許可証の有効期間 | 契約等の期間に応じ2年を超えない | 第21条 |
| 更新 | 満了の45日前から10日前までに申請、10営業日で処理、1回限り・最長2年 | 第28条・第29条 |
3. 着任日から逆算する
- 着任日の60日前〜10日前:労働許可証の申請書類を地方の行政サービスセンターへ提出(第22条第1項)。
- 提出の5日前まで:ベトナム人向けの求人公告を出しておく。
- 提出から10営業日:労働許可証が発給される(第22条第3項)。
- 労働許可証を根拠に就労ビザへ切り替える。
- 一時在留許可証を申請する。労働許可証の残存期間が上限になる。
したがって、ベトナム就労ビザ取得日数は最短でも3週間から1か月を見込むべきです。旧制度の「発給5営業日」を前提にした計画は間に合いません。さらに、健康診断書、犯罪経歴証明書、本国書類の領事認証(第5条)に要する期間が上乗せされます。日本側で認証チェーンに2〜4週間かかることは珍しくなく、実務では着任2か月前の着手が現実的です。
4. 申請書類(第18条)
- 需要説明・労働許可証発給申請書(様式第03号)
- 健康診断書(医療情報システム等に接続・共有されている場合は不要。外国発行のものは相互承認があり発行から12か月以内の場合に限り有効)
- 有効期間内の旅券
- 犯罪経歴証明書
- カラー写真2枚(4cm×6cm、白背景、正面、脱帽、眼鏡なし)
- 管理者・執行役員・専門家・技術労働者であることを証する書類(第19条)
第19条の「管理者」の証明は、本国での役職名ではなくベトナムの定款・登記・任命書上の地位で判断されます。日本本社の肩書だけでは足りない場合があり、ここで差し戻されると日数が大きく伸びます。
5. 労働許可証が不要な場合(第7条)
- 労働法第154条第3項から第8項に該当する場合
- 有限責任会社の所有者または出資額30億ドン以上の出資者
- 株式会社の取締役会長または出資額30億ドン以上の取締役会構成員
- ODA事業に関する専門・技術コンサルティング等のために入国する者
- 許可を得て活動する外国人記者
免除に当たる場合でも手続はゼロになりません。免除確認書の発給に5営業日、確認書が不要な類型でも開始の3営業日前までの通知が必要です(第10条)。会社設立時の資本構成によって、この免除を使えるかどうかが決まります。
6. よくある失敗
- 旧政令の日数で逆算する——「申請は15日前まで」「発給5営業日」は旧制度です。
- 60日より前に出す——受理されません。早すぎる申請も失敗です。
- 求人公告を飛ばす——5日前までの公告は発給の条件で、後から追完できません。
- 認証チェーンを見落とす——最も過小評価されやすい工程です。
- 更新が1回限りであることを知らない——5年目以降は新規発給のやり直しです。
7. Unilawのサポート
Unilawは、労働許可証の新規取得・更新・免除確認、就労ビザ、一時在留許可証、労働契約と出向契約の整合性確認までを一括して扱います。ベトナム就労ビザ取得日数を短縮する最大の要因は書類の整合性であり、会社設立の段階から関与することで手続の総量自体を設計できます。
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本稿は2026年9月時点の法令に基づく一般的な解説であり、個別案件についての法的助言ではありません。引用:労働法第45/2019/QH14号、政令第219/2025/NĐ-CP号、労働事件控訴審判決第01号(2025年8月18日・最高人民裁判所ホーチミン市控訴法廷)。

