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解雇 弁護士 費用 会社 側 | Unilaw

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解雇 弁護士 費用 会社 側 | Unilaw

ベトナムにおいて、企業側が従業員の解雇(懲戒解雇を含む)を行う際、法的手続きの適正性は極めて重要です。手続きに瑕疵があれば、裁判所は解雇を無効と判断し、企業に対して従業員の復職命令や未払い賃金の支払い、さらには精神的損害賠償までを命じる可能性があります。実際、ベトナムの裁判実務では、企業側の主張が退けられるケースが少なくありません。

最高人民裁判所ホーチミン市控訴裁判所の判決事例:懲戒解雇の有効性が争われた事案

2025年9月4日、最高人民裁判所ホーチミン市控訴裁判所は、判決番号02号において、ある公立小学校(以下「LTM小学校」)の職員であったNguyen Thi T氏に対する懲戒解雇処分の有効性が争われた労働紛争について、一審判決を支持し、T氏の控訴を全面的に棄却しました(2025年9月30日公表)。

本件は、LTM小学校が2020年11月24日付決定第319/QĐ-THLTM号により、職員であったT氏を懲戒解雇(強制退職)としたことに対し、T氏が当該決定の取消しと復職、未払い賃金約4億1968万ドン、精神的損害賠償2340万ドン、社会保険・医療保険・失業保険の支払い等を求めて提訴したものです。

事案の経緯と裁判所の認定事実

裁判所の認定によれば、T氏は2017年3月29日に既に一度、決定第28/QĐ-LTM号により「警告」処分を受けていました。これは政令第27/2012/NĐ-CP号第11条第1項及び第7項に基づき、「専門業務における規定・手順の不遵守、職業倫理違反」「職務遂行中における他者の名誉・人格・信用の侵害」を理由とするものでした。この警告処分の際、T氏は職員全体会議(2017年3月31日)において、過ちを是正し再犯しないこと、再犯した場合は最高処分である強制退職を受け入れる旨を表明しました。

しかしその後、T氏は以下のような複数の違反行為を繰り返しました。2019年10月24日、事務職グループ会議において不適切な言動があり、学校長は通知第78/TB-THLTM号で規律遵守を促しました。2019年12月30日午後5時30分から午後10時まで、T氏は学校内で大声を出すなど自制を失った行動をとり、近隣の治安にも影響を与えました。この件は2010年職員法(Luật Viên chức)第16条第3項及び第5項に定める職員の一般的義務違反に該当すると認定されました。

2019年12月31日から2020年12月19日にかけて、T氏は複数年にわたり職務を完遂せず、学校内で頻繁に混乱を引き起こし、教育者としての名誉を著しく損ない、学校長や教職員集団の名誉・信用・品位を深刻に侵害し、父兄や生徒の前での学校の信用を傷つけました。その結果、T氏が「警告」以上の懲戒処分を受けたことにより、学校全体が優秀労働集団の称号を剥奪されるなど、集団評価にも影響が及びました。労働組合、人民監査委員会、教職員らは何度もT氏に説明と説得を試みましたが、T氏は面会を拒否し、態度や行動を改めませんでした。

法的根拠と懲戒手続きの適正性

ベトナム労働法における懲戒解雇は、2019年労働法(Bộ luật Lao động 2019)第119条から第126条が規定する懲戒処分の枠組み、および本件では公務員・職員に適用される2010年職員法(2019年改正)と政令第27/2012/NĐ-CP号(2012年4月6日付、職員の懲戒処分及び賠償・返還責任に関する規定)に基づき実施されます。

裁判所は、懲戒権限、懲戒理由、手続きの適正性について詳細に審査しました。まず権限について、LTM小学校は第9区(現トゥードゥック市)人民委員会所属の公立事業単位であり、通達第32/2020/TT-BGDĐT号第11条および政令第112/2020/NĐ-CP号第31条に基づき、管理職ではない職員への懲戒処分権限は学校長にあると確認されました。

次に手続きについて、学校は2019年8月15日付決定第35/QĐ-LTM号で懲戒委員会を設置し、2020年8月3日に党支部委員会(出席3名全員、100%)および党支部(出席11名全員、100%)がいずれも「強制退職」処分を提案しました。同年8月4日には学校評議会(出席12名全員、100%)が同様に「強制退職」を提案し、同日の教職員会議では42名中37名(88.1%)が「強制退職」に賛成しました。その後、2020年9月4日に懲戒委員会が開催され、3名全員(100%)が「強制退職」処分を提案し、9月10日付報告第180/TTr-THLTM号が学校長に提出されました。最終的に2020年11月24日、学校長は決定第319/QĐ-THLTM号を発出し、T氏を強制退職としました。

裁判所は、T氏が2010年職員法第16条第3項・第5項(一般的義務)、第17条第1項・第3項・第5項d号(職務遂行上の義務)、第19条第1項・第5項(禁止事項)に繰り返し違反したこと、および政令第27/2012/NĐ-CP号第13条第2項に基づく懲戒手続きが適正に実施されたことを認定しました。さらに、T氏の苦情処理手続き(学校長による一次苦情処理決定第352/QĐ-THLTM号、2020年12月29日付、および人民委員会による二次苦情処理決定第2960/QĐ-UBND号、2021年6月24日付)も、2011年苦情法(Luật Khiếu nại 2011)第17条、第18条第2項、第30条、第31条、第40条および政令第124/2020/NĐ-CP号第17条に従い適正に行われたと判断しました。

会社側が解雇を有効に行うための重要ポイント

本判決から明らかなように、ベトナムで企業側が懲戒解雇を有効に行うためには、以下の要件を厳格に満たす必要があります。第一に、懲戒権限を有する者が処分を行うこと。第二に、懲戒理由が法令に明確に定められた事由に該当すること。第三に、事実認定のための証拠(報告書、議事録、確認書等)を適切に収集・保管すること。第四に、懲戒委員会の設置、関係組織(労働組合、党組織等)への諮問、本人への弁明機会の付与など、法定の手続きを一つ一つ遵守すること。そして第五に、これら全てのプロセスを書面で記録し、決定書に明記することです。

本件でLTM小学校が勝訴した最大の理由は、T氏の違反行為が複数回にわたり客観的証拠で裏付けられていたこと、そして懲戒手続きの各段階(党組織の意見聴取、懲戒委員会の開催、教職員会議での意見聴取等)が政令および通達の定めに厳格に従って実施され、全て議事録等の書面で記録されていたことにあります。さらに、T氏自身が2017年の警告処分時に「再犯時は最高処分を受け入れる」と表明していた事実も、裁判所の判断に影響を与えたと考えられます。

日系企業が直面する解雇リスクと弁護士費用の考え方

ベトナムに進出している日系企業(製造業、サービス業を問わず)にとって、従業員の解雇は常にリスクを伴います。特に、日本とは異なるベトナム特有の法制度—労働組合への事前協議義務、懲戒委員会の設置要件、書面記録の厳格性—を理解せずに解雇を進めると、後に労働裁判で敗訴し、多額の未払い賃金や損害賠償、復職命令といった不利益を被る可能性が高まります。

実際、ベトナムでは従業員側が解雇無効を主張して提訴した場合、企業側の手続き上の瑕疵を理由に企業が敗訴するケースが相当数存在します。本判決のように企業側が全面勝訴する事例は、逆に言えば、それだけ丁寧に法的手続きが踏まれていたことの証左です。したがって、企業としては解雇を検討する段階から、ベトナム労働法に精通した弁護士に相談し、手続きの設計・証拠収集・書面作成を法的にサポートしてもらうことが不可欠です。

会社側が弁護士に依頼する場合の費用は、案件の複雑さ、従業員の役職・勤続年数、争点の数、訴訟リスクの高さなどにより変動します。一般的には、解雇前の予防的アドバイス(手続き設計、書面レビュー、懲戒委員会への立会い等)で数千米ドル程度、実際に訴訟に発展した場合の代理人費用はさらに増加し、一審・二審を通じて1万米ドルから数万米ドルに及ぶこともあります。ただし、これらの費用は、敗訴した場合に企業が負担することになる未払い賃金・損害賠償・復職後の人件費・企業イメージの毀損といった総コストと比較すれば、極めて合理的な投資と言えます。

Unilawの実務経験:公立学校職員の懲戒解雇事案における代理実績

Unilawは、ベトナム労働法に関する豊富な実務経験を有しており、日系企業を含む外資系企業からの労働紛争案件を数多く手掛けてきました。本稿で紹介した最高人民裁判所ホーチミン市控訴裁判所判決番号02号(2025年9月4日)のような公立機関における懲戒解雇事案についても、法的分析と手続き設計の経験を蓄積しています。

この判決が示すように、ベトナムの裁判所は形式的な手続き遵守を極めて重視します。懲戒事由がいかに明白であっても、手続きに一つでも瑕疵があれば、企業側の主張は認められません。逆に、本件のように手続きが完璧に整っていれば、従業員側の主張は退けられます。Unilawでは、こうした実務の現実を踏まえ、企業側が解雇を検討する初期段階から関与し、以下のような包括的サポートを提供しています。

まず、解雇事由の法的評価です。従業員の行為が法令上のどの条項に該当するか、証拠は十分か、過去の処分歴との整合性はあるか、といった点を精査します。次に、懲戒手続きの設計です。懲戒委員会の構成、開催時期、議事録の記載内容、労働組合や党組織(公立機関の場合)への諮問方法、本人への通知・弁明機会の付与方法など、法令と判例に基づいた具体的な手順を提案します。さらに、証拠の収集・保全についても助言します。報告書、目撃証言、監視カメラ映像、メール・SNSのやり取り、警察や医療機関の確認書など、後の訴訟で有効となる証拠を適切に確保する方法を指導します。

そして、懲戒決定書の起案・レビューを行います。決定書には、事実認定、適用法令、懲戒理由、手続きの経過を過不足なく記載する必要があり、これが訴訟での勝敗を左右します。Unilawでは、過去の判例を踏まえた精緻な決定書の作成を支援します。万が一訴訟に発展した場合には、一審・二審を通じた訴訟代理も行います。本判決のように控訴審まで争われるケースでも、一貫した主張と証拠に基づき企業側の正当性を立証します。

解雇以外の選択肢と総合的なリスク管理

もちろん、解雇は最終手段です。Unilawでは、解雇に至る前の段階での対応についても助言しています。例えば、配置転換、降格、賃金減額、有期労働契約の更新拒否、合意退職の交渉といった選択肢について、それぞれの法的要件とリスクを比較検討し、企業にとって最も合理的な解決策を提案します。特に、合意退職(双方合意による労働契約終了)は、訴訟リスクを大幅に低減できるため、金銭的解決が可能な場合には積極的に検討すべき手段です。

また、就業規則・労働契約書の整備も重要です。解雇事由を明確に定め、懲戒手続きを詳細に規定しておくことで、実際に問題が発生した際の対応がスムーズになります。Unilawでは、日系企業向けに、ベトナム労働法に完全準拠した就業規則・契約書のドラフティングおよびレビューサービスを提供しています。

さらに、日常的な労務管理の改善も不可欠です。勤怠管理の徹底、業績評価の記録化、指導・注意の書面化、定期的な面談の実施など、将来の紛争に備えた証拠作りを日頃から行うことが、いざというときの企業防衛につながります。Unilawでは、こうした予防法務の観点から、企業の人事担当者向けの研修やコンサルティングも実施しています。

弁護士費用の透明性と費用対効果

会社側が解雇関連で弁護士に依頼する際、費用の透明性は重要な関心事です。Unilawでは、初回相談時に案件の概要をヒアリングし、想定される業務範囲と費用の見積もりを明確に提示します。費用体系は、タイムチャージ方式(時間単位での請求)または固定報酬方式(案件ごとの定額)のいずれかを選択でき、企業の予算やニーズに応じて柔軟に対応します。

例えば、解雇前の予防的相談であれば、数時間のコンサルテーションと書面レビューで数百万ドンから数千米ドル程度が一般的です。懲戒手続き全体のサポート(委員会設置から決定書作成まで)を依頼する場合は、案件の複雑さに応じて数千米ドルから1万米ドル程度となります。訴訟代理については、請求額・争点の数・審級によって変動しますが、一審のみであれば5千米ドルから1万米ドル程度、控訴審まで含めると総額で1万米ドルから3万米ドル程度が目安です。ただし、これらはあくまで一般的な相場であり、個別案件の事情により増減します。

重要なのは、弁護士費用を単なるコストではなく、リスク管理のための投資として捉えることです。本判決のケースでは、企業側(学校側)が手続きを完璧に整えたことで、従業員側の請求約4億4300万ドン(未払い賃金・損害賠償・保険料の合計)を全額退けることに成功しました。もし手続きに瑕疵があり敗訴していれば、この金額に加え、復職後の継続的な人件費負担、職場の士気低下、企業イメージの悪化といった目に見えないコストも発生していたはずです。適切な法的助言を受け、数千米ドルから数万米ドルの弁護士費用を投じることで、数億ドン規模のリスクを回避できるのであれば、その費用対効果は明白です。

日系企業特有の留意点:本社との連携と文化的配慮

日系企業がベトナムで解雇問題に直面する際、日本本社との連携も課題となります。日本の労働法感覚でベトナムの案件を判断すると、重大な誤解を招きます。例えば、日本では解雇権濫用法理により解雇のハードルが極めて高い一方、ベトナムでは法定事由と手続きさえ守れば解雇は比較的容易です。逆に、手続きを軽視すれば即座に無効となる点も日本とは異なります。Unilawでは、日本語でのコミュニケーションが可能なため、ベトナム現地法人と日本本社の間に立ち、法的論点を正確に翻訳・説明し、適切な意思決定をサポートします。

また、ベトナム特有の労働文化—労働組合の影響力、党組織の関与(国有企業・公立機関の場合)、集団主義的な職場風土—への配慮も必要です。本判決でも、懲戒手続きにおいて労働組合、党支部、教職員会議といった集団的意思決定プロセスが重視されています。日系企業がこうした現地の慣行を無視して一方的に解雇を進めれば、たとえ法的に正しくても、従業員や地域社会からの反発を招き、企業活動に支障をきたす恐れがあります。Unilawでは、法律面だけでなく、こうした文化的・社会的側面も考慮した総合的なアドバイスを提供します。

最新の法改正動向と今後の展望

ベトナム労働法は頻繁に改正・補足されており、最新の動向を常にフォローすることが不可欠です。2019年労働法は2021年1月1日に施行されましたが、その後も関連する政令・通達が次々と発出されています。例えば、2020年政令第145/2020/NĐ-CP号(労働契約に関する詳細規定)、2021年政令第145/2020/NĐ-CP号の一部改正を含む各種政令、そして本判決でも引用されている政令第112/2020/NĐ-CP号(公務員・職員の懲戒処分)など、企業が把握すべき法令は膨大です。

さらに、最高人民裁判所や地方裁判所の判例も重要な法源です。ベトナムは成文法国家ですが、実務上は判例が事実上の先例拘束力を持つことが多く、特に最高人民裁判所の判決は下級審の判断指針となります。本判決も、今後同種の懲戒解雇事案において、手続き適正性の判断基準として参照される可能性があります。Unilawでは、こうした最新判例を継続的に分析し、企業向けのニュースレターやセミナーを通じて情報提供を行っています。

実際の紛争解決における証拠と手続きの決定的重要性

本判決が示す最も重要な教訓は、懲戒解雇の有効性判断において、実体的理由(違反行為の存在)と手続的適正性が同等に重視されるという点です。裁判所は、T氏が2010年職員法第16条第3項および第5項に定める「職員の一般的義務」、同法第17条第1項、第3項および第5項d号に定める「職務遂行上の義務」、さらに同法第19条第1項および第5項に定める「禁止事項」に繰り返し違反したことを認定しました。しかし、それと同時に、政令第27/2012/NĐ-CP号第13条第2項に基づく懲戒手続きが一つ一つ適正に実施されたことを詳細に検証しています。

具体的には、2020年8月3日の党支部委員会(出席率100%)、同日の党支部会議(出席率100%)、8月4日の学校評議会(出席率100%)および教職員会議(賛成率88.1%)、9月4日の懲戒委員会(出席率100%)という一連の手続きが、それぞれ議事録として記録され、最終的に9月10日付報告書第180/TTr-THLTM号として学校長に提出されました。裁判所は、これらの手続きが2010年職員法(2019年改正)および関連政令の要求する水準を満たしていると判断し、その結果として11月24日付決定第319/QĐ-THLTM号による強制退職処分を有効と認めました。

さらに注目すべきは、苦情処理手続きの適正性についても詳細に審査されている点です。学校長による一次苦情処理(決定第352/QĐ-THLTM号、2020年12月29日付)は、2011年苦情法第17条、第30条および第31条に基づき、確認・対話・証拠収集といったプロセスを経て行われました。また、人民委員会による二次苦情処理(決定第2960/QĐ-UBND号、2021年6月24日付)も、同法第18条第2項および第40条、ならびに政令第124/2020/NĐ-CP号第17条に従い実施されたと認定されています。このように、ベトナムの労働紛争においては、本案の判断のみならず、事前の行政手続き(苦情処理)の適正性も司法審査の対象となります。

法定手続きと証拠書類の完全性が勝訴の鍵

本件でLTM小学校が全面勝訴した最大の要因は、T氏の違反行為を裏付ける証拠が多岐にわたり、かつ客観的に記録されていた点にあります。2019年10月24日の事務職グループ会議での不適切言動(議事録)、同年12月30日夜の大声・混乱行為(学校の確認書および近隣住民・警察の証言)、2019年12月31日から2020年12月19日にかけての複数年にわたる職務不履行・秩序破壊行為(複数の通知書・報告書)など、それぞれが日付・内容・関係者を特定した書面として保存されていました。

特に重要なのは、学校以外の第三者機関による確認書も証拠として提出されている点です。例えば、2020年12月25日付公安書簡第05/CAP号(LTM地区公安)は、2019年12月30日および2020年8月15日にT氏が学校内で大声を出し秩序を乱したため、公安職員が出動し警告を行った事実を確認しています。また、2020年11月12日付公文第516/GCN-BV号(トゥードゥック区病院長)、2020年11月18日付確認結果報告書なども、T氏の行為の客観性を補強しています。こうした第三者証拠の存在が、裁判所の心証形成に決定的な影響を与えたと考えられます。

対照的に、T氏側は一次・二次苦情処理および訴訟のいずれの段階でも、自身が違反行為を行っていないことを裏付ける証拠を提出できませんでした。判決文は「T氏は違反がないことを証明する法的価値のある情報・資料・証拠を提供できなかった」と明記しています。これは、ベトナム労働紛争において、従業員側が単に主観的な主張を繰り返すだけでは不十分であり、客観的証拠に基づく反証が必要であることを示しています。

法規定と裁判実務の対照分析:懲戒事由の該当性判断

2010年職員法第16条は「職員の一般的義務」として、第3項で「規律・法令の遵守」、第5項で「職務遂行時の品位・礼節の保持、団結・協力の精神」を定めています。同法第17条は「職務遂行上の義務」として、第1項で「担当業務の完遂」、第3項で「職業倫理の遵守」、第5項d号で「他者の権利・利益の尊重」を求めています。さらに第19条は「職員の禁止事項」として、第1項で「職務遂行中の他者の名誉・人格・信用侵害」、第5項で「職場秩序の破壊」を禁じています。

本判決では、これらの条項がT氏の具体的行為にどのように該当するかが詳細に認定されました。例えば、2019年12月30日の大声・混乱行為は第16条第3項および第5項(一般的義務違反)に該当し、2019年末から2020年末にかけての複数年の職務不履行は第17条第1項(業務完遂義務違反)に該当し、学校長・教職員への名誉毀損行為は第17条第3項・第5項d号および第19条第1項(職業倫理・他者権利侵害)に該当すると判断されました。さらに、こうした違反により学校全体が優秀労働集団の称号を剥奪されたという集団的影響も、処分の相当性を裏付ける事情として考慮されています。

重要なのは、政令第27/2012/NĐ-CP号が定める懲戒事由の累積性です。同政令第13条第2項は、過去に「警告」処分を受けた職員が再び違反した場合、より重い処分(強制退職を含む)を科すことができると定めています。本件では、T氏が2017年3月29日に既に「警告」処分を受けており、かつ同年3月31日の職員会議で「再犯時は最高処分を受け入れる」旨を表明していたことが重視されました。この事実は、処分の相当性判断において、単なる違反の重大性だけでなく、過去の処分歴と本人の認識・表明をも総合考慮するというベトナム労働法の実務を示しています。

日系企業が学ぶべき予防的リスク管理の実践

本判決から日系企業が学ぶべきは、解雇を検討する段階よりもはるかに前—すなわち日常的な労務管理の段階—から、将来の紛争に備えた記録化を徹底することの重要性です。LTM小学校は、T氏の問題行動が発生するたびに、日付・内容・関係者を明記した通知書・報告書・議事録を作成し、必要に応じて第三者(公安、医療機関、近隣住民等)の確認も取得していました。こうした地道な証拠収集が、最終的な訴訟での勝訴につながっています。

日系企業においても、従業員の勤怠不良、業績不振、規律違反、ハラスメント等の問題が発生した際には、口頭注意で済ませるのではなく、必ず書面(警告書、改善指導書、面談記録等)として記録し、本人の署名または受領確認を取得すべきです。また、監視カメラ映像、メール・チャット記録、同僚や顧客の証言、医師の診断書、警察の被害届など、客観的証拠を可能な限り保全することが不可欠です。ベトナムの裁判所は、こうした証拠の有無によって判断が大きく左右されます。

さらに、就業規則において懲戒事由と手続きを明確かつ詳細に定めることも重要です。ベトナム労働法は、就業規則に定めのない事由による懲戒を認めていません。したがって、想定される違反行為(遅刻・欠勤、業務命令違反、機密漏洩、暴力・ハラスメント、職場秩序破壊等)を網羅的に列挙し、それぞれに対応する懲戒処分の種類(戒告、減給、降格、解雇等)を明記しておく必要があります。本件のように、過去の処分歴が次の処分の加重事由となることも明記しておくべきです。

弁護士費用と総合的リスクの比較衡量

本件でT氏が請求した金額は、未払い賃金約4億1968万ドン、精神的損害賠償2340万ドン、社会保険等の追加負担を合わせて総額約4億4300万ドン超に及びました。もしLTM小学校が敗訴していれば、この金額に加え、T氏の復職後の継続的な人件費、他の教職員への悪影響、学校の社会的信用の低下といった目に見えないコストも発生していたはずです。日本円に換算すれば、請求額だけで約200万円以上に相当します。

これに対し、解雇前の段階から弁護士に依頼し、手続設計・証拠収集・書面作成を適切にサポートしてもらう費用は、前述のとおり数千米ドルから1万米ドル程度です。仮に1万米ドル(約150万円)の弁護士費用を支払ったとしても、4億ドン超の賠償リスクを回避できるのであれば、その投資対効果は明らかです。さらに、適切な法的助言を受けることで、不要な紛争を未然に防ぎ、企業の経営資源を本業に集中できるという間接的な利益も大きいと言えます。

Unilawでは、こうした費用対効果の観点から、企業にとって最も合理的な解決策を提案しています。場合によっては、解雇ではなく合意退職による金銭解決、配置転換、有期契約の更新拒否といった選択肢の方が、総合的なコストとリスクを低減できることもあります。初回相談時に案件の全体像を把握し、想定されるリスクと費用を透明に提示することで、企業が適切な意思決定を行えるようサポートします。

おわりに

ベトナムにおける懲戒解雇は、法定事由と手続きの両面で厳格な要件を満たさなければ無効となり、企業に多大な不利益をもたらします。本判決が示すように、勝訴のためには、違反行為の客観的証拠、法令に準拠した手続き、そして全過程の書面記録化が不可欠です。日系企業の皆様が解雇を含む労務問題に直面された際には、早期の段階でベトナム労働法に精通した専門家にご相談されることを強くお勧めします。

Unilawは、ベトナム労働法および労働紛争の豊富な実務経験を有しており、日系企業の皆様に対し、予防法務から紛争解決まで一貫したサポートを提供しています。解雇手続きの適正性に関するご不明点、就業規則の整備、個別案件のご相談など、どのようなことでもお気軽にお問い合わせください。

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