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M&A 弁護士 | Unilawの専門家が解説

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M&A弁護士 | Unilawの専門家が解説

2017年11月27日、ベトナムのGL肥料株式会社(以下「GL社」)の創立株主であったNguyễn Ngọc T氏は、同社の株式51,000株(定款資本の8.5%に相当)をNguyễn Thị Trúc D氏に5億1,000万ドン(約510万円)で譲渡しました。D氏は代金を全額支払ったにもかかわらず、株式証明書の発行を受けられず、株主名簿への記載も拒否されました。問題の核心は、この譲渡が創立株主に課せられた譲渡制限期間中に行われたという点にありました。

この事案は、ホーチミン市高等人民裁判所が2023年6月19日および26日に下した判決第63/2023/KDTM-PTにおいて審理されました。本件は、ベトナムにおけるM&A取引、特に株式譲渡に関する法的リスクを如実に示す重要な事例であり、M&A弁護士の専門的関与がいかに不可欠であるかを物語っています。

創立株主の譲渡制限とその法的根拠

本件の法的争点は、2014年企業法第119条に定められた創立株主の株式譲渡制限規定です。同条は、創立株主が企業登録証明書の交付日から3年間は、他の創立株主に対してのみ自由に株式を譲渡できると規定しています。創立株主ではない者に譲渡する場合には、株主総会の承認を得なければなりません。

この規定の趣旨は、会社設立初期における経営の安定性と創立株主の責任を確保することにあります。創立株主は会社の設立に直接関与し、定款資本の形成に貢献した者として、一定期間は会社経営へのコミットメントを維持することが期待されています。安易な第三者への譲渡を認めると、会社の設立目的や経営方針が短期間で大きく変わる可能性があり、他の株主や取引先、従業員などのステークホルダーに予測不可能な影響を及ぼしかねません。

GL社の事案では、T氏からD氏への株式譲渡が、まさにこの3年間の制限期間内に実施されました。D氏は創立株主ではなかったため、法律上は株主総会の承認が必要でした。しかし、この承認手続きを経ずに譲渡契約が締結され、代金決済まで完了したという事実関係が認定されています。

M&A取引における弁護士の役割と重要性

本件のような紛争は、M&A弁護士による適切なデューデリジェンスと契約書審査があれば未然に防げた可能性が高いといえます。M&A取引、特に株式譲渡においては、譲渡制限の有無とその内容を事前に精査することが極めて重要です。

ベトナムにおける株式譲渡の実務では、以下のような点を弁護士が確認する必要があります。第一に、譲渡人が創立株主であるか否か、そして取引時点が企業登録証明書交付日から3年以内か否かの確認です。第二に、会社定款に追加的な譲渡制限条項が設けられていないかの確認です。第三に、株主総会の承認が必要な場合、その決議要件(定足数、賛成割合など)の確認です。第四に、優先買取権や先買権が他の株主に認められていないかの確認です。

D氏のケースでは、これらの確認が不十分だったと推測されます。代金を全額支払ったにもかかわらず株主としての地位を得られないという結果は、買主にとって極めて不利な状況です。M&A弁護士が関与していれば、譲渡契約の締結前に法的障害を発見し、株主総会の承認取得を前提条件とする契約構造を提案できたはずです。あるいは、承認取得の見込みが低い場合には、取引そのものの中止を助言することも可能でした。

日系企業がベトナムでM&A取引を行う際の留意点

日本企業がベトナム企業の株式取得を検討する場合、本件のような創立株主の譲渡制限は特に注意すべきポイントです。ベトナムに進出して間もない企業や、設立後3年以内のスタートアップ企業を買収対象とする場合、譲渡人が創立株主である可能性が高く、法定の制限期間に該当する可能性があります。

日系企業のM&A担当者が理解しておくべき点として、ベトナムの企業法は日本の会社法とは異なる独自の規制体系を持っているということがあります。日本では株式譲渡制限会社において取締役会や株主総会の承認が必要となるのは定款の定めによりますが、ベトナムでは創立株主については法律で一律に制限が課されています。この違いを認識せずに日本の感覚で取引を進めると、本件のような紛争に巻き込まれるリスクがあります。

また、ベトナムのM&A実務では、株主名簿への記載と企業登録機関への変更登録が株式譲渡の対抗要件となります。GL社の事案でD氏が株式証明書を取得できず株主名簿にも記載されなかったことは、法的には株主としての地位を第三者に主張できない状態を意味します。仮に会社が後日、同じ株式を別の第三者に譲渡した場合、D氏は株主としての権利を主張できない可能性が高くなります。

さらに重要なのは、契約書の作成段階での条件設定です。M&A弁護士は、株主総会の承認取得を停止条件または前提条件として明記し、承認が得られない場合の代金返還義務や違約金条項を盛り込むことで、買主のリスクを軽減します。本件では代金が既に全額支払われていたため、D氏は金銭的損失を被るリスクにさらされました。適切な契約条項があれば、承認が得られるまで代金の全部または一部をエスクローに預託するなどの保全措置が可能でした。

裁判所の判断とその実務的意義

ホーチミン市高等人民裁判所による判決第63/2023/KDTM-PTは、ベトナムの裁判所が企業法第119条の創立株主譲渡制限規定を厳格に適用する姿勢を示したものとして、M&A実務における重要な先例となります。裁判所は、株主総会の承認を欠く譲渡契約の効力について判断を示しました。

この判決が実務に与える影響は多岐にわたります。第一に、創立株主からの株式取得を検討する買主は、株主総会の承認取得を必須の手続きとして位置づける必要があることが明確になりました。第二に、承認なしに代金を支払ってしまった買主の法的地位が不安定であることが確認されました。第三に、譲渡契約の当事者間では合意が成立していても、法定要件を満たさない限り株主としての地位を取得できないという原則が再確認されました。

日系企業のM&A担当者にとって、この判決は二つの教訓を与えています。一つは、ベトナムの企業法規制を正確に理解し遵守することの重要性です。もう一つは、現地の法律実務に精通したM&A弁護士を早期に起用し、取引の初期段階から法的リスクを洗い出すことの必要性です。

Unilawによる日系企業向けM&Aサポート

Unilawは、ベトナムにおける日系企業のM&A取引を専門的にサポートする法律事務所として、多数の実績を有しています。本件のような創立株主の譲渡制限をはじめ、ベトナム特有の法規制に関する深い知識と経験を活かし、取引の安全性を確保します。

私たちのM&Aサポートは、取引の構想段階から始まります。対象企業の選定段階で、創立株主の状況、定款の譲渡制限条項、株主構成などの基礎情報を収集し、取引実行可能性を予備的に評価します。その後、正式なデューデリジェンス段階では、企業登録証明書、定款、株主総会議事録、株主名簿などの重要書類を精査し、法的リスクを網羅的に洗い出します。

契約交渉段階では、ベトナム法に準拠した株式譲渡契約書を作成し、本件のような紛争を防ぐための条項を盛り込みます。具体的には、表明保証条項において譲渡人が創立株主である場合の株主総会承認取得義務を明記し、承認が得られない場合の解除権や損害賠償請求権を規定します。また、代金支払時期を承認取得後とするか、エスクロー制度を利用するかなど、買主保護のための決済スキームを提案します。

取引実行段階では、株主総会の招集手続き、決議要件の充足、議事録作成などを監督し、適法性を確保します。さらに、株式譲渡後の企業登録機関への変更登録、株主名簿の書き換え、株式証明書の発行など、譲渡手続きの完了まで一貫してサポートします。これにより、本件D氏が直面したような「代金を支払ったのに株主になれない」という事態を防ぎます。

企業法第119条の解釈と裁判所の適用実態

2014年企業法第119条は、創立株主の株式譲渡について明確な制限を設けています。同条第1項は「創立株主は、企業登録証明書の交付日から3年間、他の創立株主に対してのみ自由に株式を譲渡できる」と規定し、第2項は「創立株主が創立株主以外の者に株式を譲渡する場合には、株主総会の承認を得なければならない」と定めています。この規定の文言は一見明瞭に見えますが、実務上は「株主総会の承認を欠く譲渡契約の効力」という重要な論点が残されていました。

GL肥料株式会社の事案において、ホーチミン市高等人民裁判所が2023年6月19日および26日に下した判決第63/2023/KDTM-PTは、この論点に対する司法判断を示しました。裁判所は、T氏からD氏への株式譲渡が企業登録証明書交付日から3年以内に行われ、かつD氏が創立株主ではなかったにもかかわらず株主総会の承認を得ていなかったという事実を認定しました。この事実認定に基づき、裁判所は企業法第119条の趣旨を厳格に解釈し、法定要件を満たさない譲渡は株主としての地位を取得させる効力を持たないという判断を示したと理解されます。

この判決が実務に与える示唆は極めて重要です。法律の条文上、株主総会の承認は「要件」として規定されていますが、この要件を欠く場合の法的効果については明文規定がありませんでした。裁判所の判断により、承認を欠く譲渡契約は当事者間では有効に成立しているとしても、会社との関係では株主としての地位を取得できないという実務上の取扱いが明確になりました。つまり、契約法上の債権的効力と会社法上の物権的効力を区別し、後者については法定要件の充足を厳格に求める立場が確認されたのです。

D氏の立場から見れば、5億1,000万ドンという決して少なくない金額を支払ったにもかかわらず、株式証明書の発行を受けられず、株主名簿への記載も拒否されたことになります。この状況は、買主にとって最悪のシナリオといえます。代金は失われ、株主としての権利は取得できず、譲渡人に対して債務不履行責任を追及するしか救済手段が残されていない可能性があります。仮に譲渡人が無資力であれば、実質的に救済を受けられないことになります。

株主総会承認プロセスの実務的課題

企業法第119条が要求する株主総会の承認について、実務上どのような手続きが必要となるのかを理解することは、M&A弁護士にとって不可欠です。株主総会の招集には、2014年企業法第142条に基づき、会議開催日の少なくとも7日前(定款でより長い期間を定めている場合はその期間)までに株主への通知が必要です。通知には、会議の日時、場所、議題、審議事項の概要を記載しなければなりません。

創立株主からの株式譲渡承認という議案は、通常の株主総会で決議することができますが、定足数と議決要件に注意が必要です。2014年企業法第144条によれば、株主総会は定款資本の少なくとも51%を代表する議決権を有する株主が出席した場合に有効に成立します。決議は、出席株主の議決権の過半数の賛成により採択されます。ただし、定款でより厳格な要件を定めることも可能です。

GL社の事案では、T氏とD氏は株主総会の承認を得ることなく譲渡契約を締結し、代金決済まで完了させてしまいました。この順序が逆転していたことが、紛争の根本原因です。M&A弁護士が関与していれば、まず株主総会の承認取得を優先し、承認が得られた後に代金決済を実行するという正しい手順を助言できたはずです。あるいは、承認取得を停止条件とする譲渡契約を締結し、承認が得られなかった場合には契約が失効するという条項を設けることも可能でした。

日系企業が直面する特有のリスク

日本企業がベトナムの新興企業や設立間もない企業への出資を検討する場合、本件で問題となった創立株主の譲渡制限は特に重要なチェックポイントとなります。ベトナムのスタートアップエコシステムは急速に発展しており、多くの日系企業が成長段階にあるベトナム企業への戦略的投資を拡大しています。しかし、投資対象企業が設立後3年以内である場合、創立株主から株式を取得しようとすると必然的に企業法第119条の制限に直面します。

日系企業のM&A担当者が陥りがちな誤解として、「代金を支払えば株主になれる」という日本的な感覚があります。日本では株式譲渡制限会社であっても、会社の承認を得られなかった場合には指定買取人による買取という救済手段が会社法第140条以下に用意されています。しかし、ベトナムの企業法にはこのような救済規定がなく、承認を得られなければ買主は株主になれないという結果が確定してしまいます。GL社の事案におけるD氏の状況は、この法制度の違いを認識していなかった場合に何が起こるかを示す典型例です。

さらに、日系企業が注意すべき点として、創立株主の範囲の確認があります。ベトナムの企業登録実務では、創立株主は企業登録証明書に明記されますが、その後の株式譲渡により創立株主でなくなった者と、創立株主から株式を取得して新たに株主となった者が混在する状況が生じます。デューデリジェンス段階で、譲渡人が現時点でも創立株主としての地位を保持しているか、過去に一度でも第三者に譲渡したことがあるか(その場合は既に創立株主ではない)を慎重に確認する必要があります。

M&A契約書における保護条項の設計

本件のような紛争を防ぐために、M&A弁護士は株式譲渡契約書に複数の保護条項を盛り込む必要があります。第一に、譲渡人の表明保証条項として、自らが創立株主であるか否か、譲渡制限期間内であるか否か、株主総会の承認が必要か否かを明確に表明させます。これらの表明が虚偽であった場合の損害賠償責任を明記することで、譲渡人に正確な情報開示のインセンティブを与えます。

第二に、前提条件条項として、株主総会の承認取得を契約の効力発生要件または代金支払の前提条件として規定します。これにより、承認が得られない限り買主は代金支払義務を負わないという構造を作ることができます。GL社の事案でD氏がこのような条項を設けていれば、承認なしに代金を支払ってしまうという事態は避けられました。

第三に、譲渡人の協力義務条項として、株主総会の招集、承認議案の提出、他の株主への説明など、承認取得に向けた具体的な行動義務を詳細に規定します。譲渡人が会社の経営に影響力を持つ場合、この協力義務の履行が承認取得の成否を左右します。協力義務違反があった場合の違約金条項も併せて設けることで、実効性を確保します。

第四に、エスクロー条項を設け、代金の全部または一部を第三者(銀行や弁護士)に預託し、株式証明書の発行と株主名簿への記載が完了した時点で譲渡人に支払われる仕組みを構築します。これにより、D氏が直面したような「代金を支払ったのに株主になれない」というリスクを大幅に軽減できます。

Unilawの実践的サポート体制

Unilawでは、GL肥料株式会社の事案のような紛争を未然に防ぐため、日系企業向けに包括的なM&Aサポートを提供しています。私たちの強みは、ベトナム法の条文解釈だけでなく、判決第63/2023/KDTM-PTのような実際の裁判例に基づいた実務的なリスク評価ができる点にあります。創立株主の譲渡制限という一見単純な規制であっても、実務上は株主総会の承認プロセス、契約書の条項設計、決済スキームの構築など、多層的な検討が必要です。

私たちは、デューデリジェンスの段階で企業登録証明書と定款を精査し、譲渡制限の有無と内容を確認します。株主総会の承認が必要な場合には、承認取得の実現可能性を評価し、他の株主の意向や会社の方針を踏まえた戦略を提案します。契約書の作成では、本稿で説明した各種の保護条項を盛り込み、買主のリスクを最小化します。そして、取引実行段階では株主総会の運営をサポートし、承認決議の適法性を確保します。

ベトナムでのM&A取引において創立株主からの株式取得を検討されている日系企業の皆様、またはGL社の事案のような紛争に直面されている方は、ぜひUnilawにご相談ください。ベトナム企業法と実務に精通した私たちの専門チームが、皆様の取引の成功を全力でサポートいたします。

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