ベトナム弁護士費用は「相場」で決まるものではなく、契約書の文言で決まります。ベトナム弁護士法は算定の根拠と方式を定めていますが、金額そのものは当事者の合意に委ねられており、条項の書き方ひとつで請求額が十倍以上変わった裁判例が実際にあります。本稿では、まずその判例を示し、次に法定の算定基準、最後に見積りを受け取ったときの確認手順を整理します。
1. 判例:20百万ドンの契約が2億1,000万ドンの請求になった事案
破棄審決定第26/2022/DS-GĐT号(2022年6月23日・ダナン高級人民裁判所)、事件名「法律サービス契約および懸賞約束をめぐる紛争」。
- 事案:依頼者夫妻が法律事務所と法律サービス契約を締結。第4.1条の固定報酬は2,000万ドン。ところが第4.2条には、一定の成果が得られた場合に取得した土地の価値の2分の1を追加で支払うという成功報酬条項が置かれていました。
- 経過:事務所の支援により依頼者は再定住用地の使用権証明書を取得。事務所は第4.2条に基づき、土地評価額4億ドンの半分である2億ドンと残債1,000万ドンの支払いを求めて提訴しました。
- 裁判所の判断:契約は自由意思で締結され、内容が法令・社会倫理に反しないため有効。控訴審は2億1,000万ドンの支払いを命じました。破棄審は、当事者が別途合意していた土地使用料の折半(1億3,348万4,000ドン)を先に控除すべきであるのに、控除前の金額に遅延利息を課した点を誤りとし、支払額を1億1,071万5,507ドンに修正しました。
読み取るべき点は三つです。第一に、成功報酬条項は有効に成立し、裁判所も執行すること。第二に、「成果」の定義と算定基礎(何の価値の何割か、いつ時点の評価か)を書いていないと、後から評価額の争いになること。第三に、遅延利息条項も有効で、支払期限を過ぎれば契約で定めた利率が積み上がることです。
2. ベトナム弁護士費用の法的根拠
根拠は弁護士法第65/2006/QH11号(第20/2012/QH13号により改正)です。
| 条文 | 内容 |
| 第54条 | 依頼者は弁護士の法律サービスを利用する際、報酬を支払わなければならない |
| 第55条第1項 | 報酬額の算定根拠は、①法律サービスの内容・性質、②弁護士が費やす時間と労力、③弁護士の経験と信用 |
| 第55条第2項 | 算定方式は、①時間制、②案件ごとの一括報酬、③訴額・契約金額・事業価値に対する割合、④固定報酬の長期契約の4方式 |
| 第56条第1項 | 報酬額は法律サービス契約で合意する(刑事事件で弁護士が訴訟に参加する場合は政府が定める上限を超えられない) |
| 第56条第2項 | 交通費・宿泊費その他の合理的費用も契約で合意する |
つまり、ベトナム弁護士費用に法定の料金表は存在しません(刑事事件の上限を除く)。4つの方式のどれを選ぶか、割合方式なら何を分母にするか、実費をどこまで含むか——これらはすべて契約書に書かれた内容がそのまま効力を持ちます。
3. 4つの算定方式の使い分け
- 時間制——調査・交渉・デューデリジェンスなど、作業量が読みにくい業務に向きます。単価と、上限(キャップ)の有無を必ず確認してください。
- 案件ごとの一括報酬——会社設立、労働許可証、商標出願など、工程が定型化している手続に向きます。どこまでが含まれ、どこからが追加費用かの線引きが要点です。
- 割合方式——訴訟・M&A・債権回収など。上記判例のとおり、分母の定義と評価時点を書き落とすと後で必ず争いになります。
- 長期固定(顧問契約)——月額で相談・書面レビューを受ける形。月あたりの時間枠と、枠を超えた場合の単価を決めておきます。
4. 見積書を受け取ったときの確認項目
- 算定方式は4方式のどれか。混在している場合、どの業務にどの方式が適用されるか。
- 割合方式なら分母は何か、評価の時点はいつか、誰が評価するか。
- 実費(政府手数料、翻訳、公証、領事認証、交通・宿泊)は報酬に含まれるか別建てか。
- 成果が出なかった場合の扱い。着手金は返還されるのか。
- 支払期限と遅延利息の利率。判例のとおり利息条項は有効に働きます。
- 付加価値税(VAT)が含まれた金額か否か。
5. Unilawの費用の考え方
Unilawは、案件の性質に応じて上記4方式を使い分け、契約前に作業範囲・除外事項・実費の扱い・支払時期を書面で確定します。ベトナム弁護士費用についてのご相談は、案件の概要と希望する解決時期をお知らせいただければ、方式の選択肢とともにご提示します。
この分野の関連情報
個別の論点は下記の記事で詳しく扱っています。
本稿は2026年9月時点の法令に基づく一般的な解説であり、個別案件についての法的助言ではありません。引用:弁護士法第65/2006/QH11号(第20/2012/QH13号による改正)、破棄審決定第26/2022/DS-GĐT号(2022年6月23日・ダナン高級人民裁判所)。


