会社破産相談 | Unilawの法律専門家が徹底サポート
ベトナムで事業を展開する日系企業にとって、経営環境の変化や予期せぬ経済状況の悪化により、事業継続が困難になるケースは決して珍しくありません。特に新型コロナウイルス感染症の影響や、サプライチェーンの混乱、原材料価格の高騰などにより、財務状況が急速に悪化し、会社破産を検討せざるを得ない状況に直面する企業が増加しています。
ベトナムにおける会社破産手続きは、日本の破産法制度とは大きく異なる点が多く、適切な専門家による相談なしに進めることは極めて危険です。本稿では、ベトナムで事業を行う日系企業の経営者・責任者の方々に向けて、ベトナム法における会社破産相談の重要性と、実務上押さえるべきポイントについて、法的根拠に基づき詳細に解説いたします。
ベトナムにおける企業破産の法的枠組み
ベトナムにおける企業破産は、2014年破産法(Luật Phá sản 2014、法律第51/2014/QH13号)により規律されています。同法は2015年1月1日に施行され、旧破産法(2004年)に代わる包括的な破産法制として機能しています。
2014年破産法第2条第1項によれば、破産とは「企業、協同組合その他の経済組織が債務を履行できない状態にある場合に、裁判所の決定により適用される法的措置」と定義されています。ここで重要なのは、ベトナム法における破産は単なる清算手続きだけでなく、企業再生手続きも含む包括的な概念である点です。
同法第3条第1項は、破産手続きの対象となる主体を明確に規定しており、企業法に基づいて設立された各種会社(有限責任会社、株式会社、合名会社、合資会社)、協同組合、協同組合連合、その他の経済組織が含まれます。したがって、日系企業がベトナムに設立した現地法人も、当然にこの破産法の適用対象となります。
破産相談が必要となる状況の見極め
企業が破産を検討すべき状況について、2014年破産法第5条は「支払不能状態」の概念を導入しています。同条によれば、企業が債務の履行期が到来したにもかかわらず債務を履行できず、かつ以下のいずれかの状況にある場合、支払不能状態にあると判断されます。
- 債務履行期から3ヶ月が経過しても、企業が債務総額または債権者が破産申立てを行った債務額を弁済できない場合
- 破産申立て時において、企業の総資産が債務総額に満たない場合
この法的基準は極めて重要です。多くの経営者は、実際に支払不能状態に陥るまで専門家への相談を先延ばしにしてしまいますが、破産法上の支払不能状態が確定する前の段階で相談を開始することが、選択肢を最大化し、より良い解決策を見出すための鍵となります。
実務上、以下のような状況が見られる場合には、速やかに破産を含めた法的選択肢について専門家に相談すべきタイミングと言えます。
- 3ヶ月以上にわたり従業員給与の支払いが遅延している
- 主要取引先からの債務履行請求が継続的に発生している
- 銀行借入の返済が滞り、期限の利益喪失の通知を受けている
- 税務当局からの納税催促が繰り返されている
- 資産の差押えや強制執行の手続きが開始されている
破産手続きの種類と選択肢
2014年破産法は、企業が直面する財務状況に応じて、複数の法的手続きを用意しています。破産相談において最も重要なのは、自社の状況に最も適した手続きを選択することです。
同法第4章から第7章にかけて、以下の4つの主要な手続きが規定されています。
(1)企業再生手続き(Thủ tục phục hồi hoạt động kinh doanh)
2014年破産法第50条以降に規定される企業再生手続きは、一時的な財務困難に直面しているものの、事業の継続可能性がある企業を対象とした手続きです。この手続きでは、裁判所の監督の下で再生計画を策定し、債権者の同意を得て事業の再建を図ります。
同法第54条によれば、企業再生手続きの期間は原則として3ヶ月以内とされ、必要に応じて最大3ヶ月まで延長可能です。この期間中、企業は裁判所が選任する企業管理人(quản lý viên doanh nghiệp)の監督下で事業を継続します。
(2)破産手続き(Thủ tục thanh lý tài sản)
2014年破産法第68条以降に規定される破産手続きは、企業の資産を清算し、債権者への配当を行う手続きです。企業再生の見込みがない場合、または再生手続きが失敗した場合にこの手続きに移行します。
同法第71条は、破産管財人(quản tài viên)による資産の管理、評価、売却のプロセスを詳細に規定しており、その手続きは極めて形式的かつ厳格です。破産手続きが開始されると、企業の経営権は破産管財人に移転し、取締役会や社長は企業資産の処分権限を失います。
破産申立ての主体と手続き開始要件
2014年破産法第6条は、破産手続きを申し立てることができる主体を明確に規定しています。同条第1項によれば、破産申立権を有するのは、(a)債務者である企業自身、(b)債権者、(c)労働者または労働者集団、(d)検察院の4者です。
このうち企業自身による破産申立て(自己破産申立て)は、経営者が財務状況を客観的に判断し、早期に法的整理を開始する上で極めて重要な選択肢です。同法第7条第1項は、企業が支払不能状態にあると判断した場合、企業の法定代表者は破産申立てを行う義務を負うと規定しています。この義務に違反し、申立てを怠った場合、法定代表者は2014年破産法第209条に基づき、最大5,000万ドン(約2,000米ドル相当)の罰金に処せられる可能性があります。
破産申立ては、企業の本店所在地を管轄する省級人民裁判所(Tòa án nhân dân cấp tỉnh)に対して行われます(2014年破産法第10条第1項)。申立書には、同法第8条に基づき、企業の財務諸表、資産目録、債権者リスト、債務総額とその内訳、支払不能状態を証明する書類などを添付しなければなりません。
破産相談における専門家の役割と重要性
ベトナムにおける破産手続きは、法的に極めて複雑であり、適切な専門家による支援なしに進めることは多大なリスクを伴います。特に日系企業の場合、言語の障壁に加え、ベトナム法制度に対する理解不足から、手続き上の重大な誤りを犯してしまうケースが少なくありません。
破産相談において弁護士が果たす主要な役割は以下の通りです。
- 企業の財務状況を法的観点から分析し、破産法第5条に定める支払不能状態の該当性を判断する
- 企業再生手続きと破産手続きのいずれが適切か、専門的見地から助言する
- 破産申立書および必要書類を法的要件に従って準備する
- 裁判所における手続きを代理し、債権者会議での交渉を支援する
- 取締役・株主の個人責任リスクを評価し、リスク軽減策を講じる
特に重要なのは、2014年破産法第213条および第214条に規定される企業経営者の責任に関するリスク評価です。同法第213条第1項は、企業が破産に至った原因が取締役会メンバー、社長、総責任者その他の経営幹部の故意または重大な過失による場合、これらの者は企業の債務について個人として連帯責任を負うと明確に定めています。
実務上、以下のような行為は、経営者の個人責任を発生させる重大な過失と判断される可能性があります。
- 財務状況が悪化しているにもかかわらず、不適切な投資や事業拡大を継続した場合
- 債権者を害する意図で資産を隠匿、移転、または不当に低い価格で処分した場合
- 特定の債権者に対して不当な優先弁済を行った場合
- 会計帳簿を適切に保管せず、または虚偽の財務諸表を作成した場合
債権者との交渉と合意による解決
破産相談において、常に裁判所を通じた正式な破産手続きが最善の選択肢であるとは限りません。2014年破産法第11条は、「裁判所外での和解」(Hòa giải ngoài Tòa án)の可能性を明示的に認めており、企業と債権者が合意に達した場合、裁判所での破産手続きを経ずに債務問題を解決することが可能です。
裁判所外での和解には、以下のような利点があります。第一に、手続きの迅速性です。裁判所での破産手続きは、申立てから最終的な配当完了まで、最短でも1年以上を要するのが通常ですが、和解交渉であれば数ヶ月で解決に至ることも可能です。第二に、費用の節減です。破産管財人への報酬、裁判所費用、公告費用などの法定費用を削減できます。第三に、企業のレピュテーションリスクの軽減です。正式な破産手続きは公開情報となり、取引先や市場での信用に長期的な悪影響を及ぼしますが、私的な和解であればそのリスクを最小化できます。
ただし、債権者との和解交渉を成功させるためには、専門家による綿密な戦略立案と交渉支援が不可欠です。特に複数の債権者が存在する場合、各債権者の利害を調整し、全員の同意を得ることは高度な交渉技術を要します。
日系企業特有の留意点
日系企業がベトナムで破産手続きを進める際には、いくつかの特有の留意点があります。
第一に、日本本社との関係です。ベトナム現地法人が破産する場合でも、日本本社が連帯保証人となっている債務については、本社が引き続き責任を負います。したがって、破産相談においては、現地法人の債務のうち、どの部分が本社保証付きか、保証のない債務についてどのように処理するかを明確に整理する必要があります。
第二に、日本人駐在員の法的責任です。現地法人の法定代表者または取締役として登記されている日本人駐在員は、前述の2014年破産法第213条に基づく個人責任を負う可能性があります。破産に至る前の早期段階で適切な措置を講じることで、このリスクを軽減することが可能です。
第三に、ベトナムからの撤退手続きとの関係です。破産手続きは、単なる債務整理だけでなく、ベトナムでの事業を正式に終了させ、投資ライセンスを返納し、税務清算を完了させるための法的プロセスでもあります。これらの手続きを適切に完了させないまま事実上の撤退を行うと、後日、税務当局や労働当局から追及を受けるリスクがあります。
破産手続き費用と期間
破産相談において、依頼者が最も関心を持つのは、手続きにかかる費用と期間です。2014年破産法第199条は、破産手続きにかかる費用の範囲を明確に規定しており、これには、(a)裁判所費用、(b)破産管財人報酬、(c)企業管理人報酬、(d)鑑定費用、(e)資産保全費用、(f)公告費用などが含まれます。
破産管財人の報酬については、2014年破産法第26条および政府議定第22/2015/NĐ-CP号により詳細に規定されています。報酬額は、管理する資産の価値および手続きの複雑性に応じて決定され、一般的には清算資産価値の2%から5%の範囲となります。
手続き期間については、企業再生手続きの場合は前述の通り3ヶ月(延長可能で最大6ヶ月)ですが、破産清算手続きの場合は、同法第72条により、資産清算期間として6ヶ月以内と定められています。ただし、実務上は、資産の評価・売却、債権の調査・確定、債権者への配当といった一連のプロセスに1年から2年程度を要することが一般的です。
実務における法的枠組みと実際の運用
2014年破産法は包括的な法的枠組みを提供していますが、実務上の運用においては、法文と実際の裁判所の判断との間に重要な差異が見られることがあります。
例えば、同法第5条は支払不能状態の判断基準として「債務履行期から3ヶ月経過」または「総資産が債務総額に満たない」という2つの客観的基準を定めていますが、実際の裁判実務では、裁判所はこれらの形式的要件のみならず、企業の事業継続可能性、将来的な収益見通し、経営者の誠実性などの実質的要素も総合的に考慮して判断を下します。特に企業再生手続きの開始可否を判断する際には、単に現時点で支払不能であるかどうかだけでなく、再生計画の実現可能性が重視されます。
また、2014年破産法第54条は企業再生計画の承認要件として、出席した無担保債権者の過半数の同意および債権額ベースで総無担保債権額の65%以上の同意を要求しています。この規定に関して、実務上、裁判所は形式的な議決権数だけでなく、反対する債権者の反対理由が合理的かどうか、再生計画が誠実に作成されているかどうかについても実質的な審査を行います。特に、大口債権者と小口債権者の利害が対立する場合、少数債権者の利益保護の観点から、法定要件を満たしていても計画承認を留保するケースも見られます。
さらに、2014年破産法第213条に規定される経営者の個人責任についても、法文上は「故意または重大な過失」という抽象的な要件が定められているのみですが、実際の裁判実務では、どのような行為が「重大な過失」に該当するかについて、具体的な事実関係に基づいた詳細な認定が行われます。裁判所は、単に結果として企業が破産したという事実だけでなく、経営判断当時の状況、入手可能だった情報、通常の経営者であれば取るべき行動との比較などを総合的に検討し、経営者の責任の有無と範囲を判断します。
このように、法律の条文と実際の裁判実務との間には、解釈の幅が存在します。ベトナムにおける破産相談では、単に法文を理解するだけでなく、実際の裁判所の判断傾向や実務運用を熟知した専門家の助言が不可欠となります。
まとめ
ベトナムにおける会社破産は、法的に極めて複雑なプロセスであり、適切な時期に専門家に相談することが、経営者および企業にとって最善の結果をもたらす鍵となります。支払不能状態に陥る前の早期段階で、法的選択肢を把握し、戦略的に対応することで、企業再生の可能性を最大化し、または円滑な事業撤退を実現することが可能です。
Unilawは、ベトナムにおける企業破産および事業再生の分野で豊富な経験を有し、日系企業の皆様に対して、法的に正確かつ実務的に実行可能な解決策をご提案いたします。会社の財務状況にご不安をお感じの際は、問題が深刻化する前に、ぜひUnilawの法律専門家にご相談ください。貴社の状況を詳細に分析し、最適な法的戦略をご提案させていただきます。