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ベトナムにおける国際 訴訟の法的実務と外国判決の承認執行に関する深い分析

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ベトナムにおける国際訴訟の法的実務と外国判決の承認執行に関する深い分析

2017年8月15日、中国広東省の広州仲裁委員会は、JIN YE Corporationとベトナム所在のShengli特殊鋼有限責任会社(以下「会社A」という)との間の商事紛争に関し、仲裁判断番号5171(2016)S.Z.A.Ziを下した。この判断は、会社Aの反対請求を一部認容する内容を含んでいた。その後、JIN YEはベトナムにおいて当該仲裁判断の承認執行を求める手続を開始した。タイビン省人民裁判所は2020年9月30日付第一審決定第01/2020/QĐST-KDTMにより承認執行を認めたが、ハノイ高等人民裁判所は2021年3月31日付控訴審決定第188/2021/QĐ-PTにおいて、広州仲裁委員会が会社Aの反対請求を適切に受理しなかったとして原決定を覆した。しかし、最高人民裁判所は2024年6月11日付監督審決定第09/2024/KDTM-GĐTにより、控訴審決定を破棄し第一審決定を維持する判断を下した。

この事案は、ベトナムにおける国際訴訟実務、特に外国仲裁判断の承認執行手続において極めて重要な法的論点を提示している。ベトナムで事業を展開する日本企業にとって、国境を越えた紛争が発生した際、外国で得た判決や仲裁判断がベトナム国内で実際に執行可能かどうかは、事業リスク管理上の最重要事項である。本稿では、この最高人民裁判所決定を詳細に分析することにより、ベトナムにおける外国判決・仲裁判断の承認執行に関する法的枠組みと実務上の留意点を明らかにする。

ベトナムにおける外国仲裁判断承認執行の法的基盤

ベトナムにおける外国仲裁判断の承認執行は、主に2015年民事訴訟法(2011年改正を含む)第XXXIV章「外国裁判所の判決・決定、外国仲裁判断のベトナムにおける承認執行」(第420条~第429条)および1958年外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(ニューヨーク条約)によって規律される。特に、2015年民事訴訟法第424条は、外国仲裁判断がベトナムで承認執行されるための確定的要件を定めている。

本件において最高人民裁判所が依拠した主要な法的根拠は以下の通りである。第一に、ニューヨーク条約第III条は、締約国が外国仲裁判断を自国の手続規則に従って承認執行する義務を定めている。中国とベトナムは共に同条約の締約国であるため、ベトナムは中国で下された仲裁判断について承認執行義務を負う。第二に、2015年民事訴訟法第451条は、外国仲裁判断の承認執行申立ての期限を規定しており、本件ではJIN YEが適時に申立てを行ったことが確認された。第三に、同法第424条は、仲裁判断が最終的であり紛争全体を解決し仲裁手続を終結させるものであること、当事者に対し拘束力を有することなど、承認執行の実体的要件を列挙している。

反対請求の適切な取扱いをめぐる法的争点

本件の中心的争点は、広州仲裁委員会が会社Aの反対請求を適切に受理し審理したか否かという点にあった。控訴審であるハノイ高等人民裁判所は、同委員会が広州仲裁委員会仲裁規則第19条に違反し反対請求を受理しなかったと判断したが、最高人民裁判所はこの認定を明確に否定した。

最高人民裁判所の監督審決定における詳細な事実認定によれば、広州仲裁委員会仲裁規則第19条第III項および第IV項は、反対請求の提出および受理について同規則第14条および第15条を参照して実施すべきこと、請求と反対請求が同一紛争に関するものである場合は併合審理されるべきことを定めている。同規則第15条第I項は、仲裁申立て受理後、要件を満たす場合は当事者が仲裁費用を前納した日から5日以内に受理することを規定している。最高人民裁判所は、仲裁判断番号5171(2016)S.Z.A.Ziが、会社Aを被申立人(反対請求申立人)、JIN YEを申立人(反対被請求人)と明確に特定していること、広州仲裁委員会仲裁規則に基づき会社Aの反対請求を審理したこと、会社Aが提出した反対請求に関する証拠の検証を実施したこと、会社Aが提起した反対請求の事実認定を行ったこと、会社Aの反対請求に対する意見を述べたこと、そして会社Aの反対請求を一部認容する判断を下したことを確認した。

さらに重要な点として、最高人民裁判所は、手続過程において会社Aが当該仲裁判断のベトナム語翻訳に対して異議を述べなかったことを指摘している。これらの事実を総合的に検討した結果、最高人民裁判所は、仲裁判断番号5171(2016)S.Z.A.Ziが仲裁合意に従って会社Aの反対請求を解決し、広州仲裁委員会仲裁規則第19条および第72条に基づき会社Aの反対請求権を保障したと結論づけた。仲裁合意は適法かつ有効であり、仲裁廷の構成および紛争解決手続はJIN YEと会社Aの仲裁合意ならびに広州仲裁委員会仲裁規則に適合しており、仲裁手続への代理参加も適法であり、当該仲裁判断は中国において執行力を有するものであると認定された。

外国仲裁判断承認の実体的要件に関する司法判断

最高人民裁判所は、第一審裁判所が仲裁判断番号5171(2016)S.Z.A.Ziを「JIN YEと会社Aとの間の紛争全体に関する最終判断であり、仲裁手続を終結させ当事者に対し拘束力を有するもの」と認定し、ベトナムにおける承認執行の要件を満たすと判断したことは、2015年民事訴訟法第424条およびニューヨーク条約の規定に適合すると明示した。他方、控訴審裁判所が「広州仲裁委員会が会社Aの反対請求を受理しなかったことは広州仲裁委員会仲裁規則第19条に違反する」と認定し、これを理由に仲裁判断の承認を拒否したことは誤りであると明確に判示した。

この判断は、外国仲裁判断の承認拒否事由を極めて限定的に解釈するベトナム裁判所の基本姿勢を示している。2015年民事訴訟法第426条は、外国仲裁判断の承認拒否事由を列挙しているが、最高人民裁判所は本件において、仲裁機関が自己の仲裁規則に従って反対請求を適切に審理している限り、その手続的判断を尊重し、形式的な瑕疵を理由として承認を拒否すべきでないという立場を明確にした。これは、ニューヨーク条約の基本精神である「外国仲裁判断の円滑な承認執行」という国際的潮流に沿った解釈であり、ベトナムが国際商事仲裁に友好的な法域であることを示す重要な判例といえる。

国際訴訟における手続保障と当事者の防御権に関する考察

本件において最高人民裁判所が重視した法的要素の一つは、仲裁手続における当事者の手続的権利保障である。2015年民事訴訟法第424条は、外国仲裁判断がベトナムで承認執行されるための要件として、仲裁合意の有効性、仲裁廷の構成および紛争解決手続が当事者間の合意に適合すること、代理参加が適法であることなどを列挙している。最高人民裁判所決定第09/2024/KDTM-GĐTは、これらの要件を個別に検証し、広州仲裁委員会における仲裁手続が会社Aの手続的権利を十分に保障していたことを確認した。

特に注目すべきは、最高人民裁判所が反対請求の「受理」と「審理」を明確に区別した点である。控訴審であるハノイ高等人民裁判所は、広州仲裁委員会が会社Aの反対請求を形式的に「受理」しなかったと認定したが、最高人民裁判所は仲裁判断の実質的内容を詳細に分析し、同委員会が会社Aを「被申立人(反対請求申立人)」と明確に特定し、広州仲裁委員会仲裁規則第19条および第72条に基づき反対請求を実質的に審理し、証拠の検証を実施し、事実認定を行い、最終的に反対請求を一部認容する判断を下したことを重視した。この判断は、国際仲裁手続における形式と実質の関係について重要な示唆を与えるものである。すなわち、仲裁機関が自己の仲裁規則に従い当事者の請求を実質的に審理し判断している限り、形式的な手続上の瑕疵のみを理由として承認を拒否すべきではないという原則である。

法規定と実際の司法適用の比較分析

2015年民事訴訟法第426条は、外国仲裁判断の承認拒否事由を限定列挙している。同条によれば、ベトナム裁判所は、①仲裁合意が当事者の行為能力の欠如により無効である場合、②一方当事者が仲裁廷の構成または仲裁手続について適切に通知を受けなかった場合または防御不能であった場合、③仲裁判断が仲裁合意の範囲外の事項を含む場合、④仲裁廷の構成または仲裁手続が当事者の合意に反する場合、⑤仲裁判断がまだ拘束力を有しないかまたは取り消された場合、⑥紛争事項がベトナム法により仲裁不能である場合、⑦仲裁判断の承認執行がベトナムの基本的法原則に反する場合にのみ、承認を拒否することができる。

本件における最高人民裁判所決定第09/2024/KDTM-GĐTの実際の適用を見ると、裁判所はこれらの拒否事由のいずれも認められないと判断した。具体的には、仲裁合意は適法かつ有効であり(拒否事由①に該当せず)、会社Aは仲裁手続において反対請求を提起し証拠を提出し意見を述べる機会を十分に与えられており(拒否事由②に該当せず)、仲裁判断は当事者間の商事紛争という仲裁合意の範囲内の事項のみを扱っており(拒否事由③に該当せず)、仲裁廷の構成および手続は広州仲裁委員会仲裁規則に適合しており(拒否事由④に該当せず)、当該仲裁判断は中国において執行力を有するものであり(拒否事由⑤に該当せず)、商事紛争は仲裁可能事項であり(拒否事由⑥に該当せず)、承認執行がベトナムの基本的法原則に反するものではない(拒否事由⑦に該当せず)と認定した。

さらに重要な点として、最高人民裁判所は2015年民事訴訟法第451条が定める申立期限の遵守についても確認している。同条は、外国仲裁判断の承認執行申立ては、仲裁判断が執行力を有した日から3年以内に行わなければならないと規定している。本件では、広州仲裁委員会の仲裁判断が2017年8月15日に下され、JIN YEは適時に申立てを行ったことが確認された。この事実認定は、手続的要件の遵守が承認執行の前提条件であることを明確に示している。

翻訳文書に対する当事者の不異議と手続的権利放棄

本件のもう一つの重要な法的論点は、会社Aが仲裁判断のベトナム語翻訳に対して異議を述べなかったという事実である。最高人民裁判所は、この事実を手続過程における会社Aの黙示的承認と評価し、会社Aが自己の反対請求が適切に審理されなかったとの主張を後から持ち出すことは認められないと判断した。この判断は、国際訴訟における当事者の訴訟上の信義則および手続的権利の適時行使義務を示すものである。

ベトナムにおける外国仲裁判断承認執行手続では、申立人は仲裁判断の認証翻訳文を提出する義務を負う。相手方当事者がこの翻訳文に異議を述べる機会は手続の初期段階で与えられており、この段階で異議を述べなかった場合、後の段階で翻訳の正確性や仲裁手続の適正性を争うことは原則として認められない。本件において会社Aは、タイビン省人民裁判所における第一審手続およびハノイ高等人民裁判所における控訴審手続を通じて、JIN YEが提出した仲裁判断のベトナム語翻訳に対して異議を述べる機会を有していたにもかかわらず、これを行使しなかった。最高人民裁判所は、この事実を会社Aによる手続的権利の放棄と評価し、控訴審裁判所が事後的に仲裁手続の瑕疵を認定したことは不当であると判断した。

日本企業への実務的示唆

本判決は、ベトナムで事業を展開する日本企業に対し、複数の重要な実務的教訓を提供している。第一に、中国をはじめとするニューヨーク条約締約国で得た仲裁判断は、原則としてベトナムで承認執行される可能性が高いということである。ベトナム裁判所は、外国仲裁判断の承認拒否事由を極めて限定的に解釈する傾向にあり、仲裁機関が自己の仲裁規則に従って適切に手続を実施している限り、形式的な瑕疵を理由として承認を拒否することは少ない。

第二に、仲裁手続における反対請求の取扱いについては、仲裁機関の仲裁規則および手続的判断が尊重されるということである。本件では、広州仲裁委員会が自己の仲裁規則に基づき会社Aの反対請求を実質的に審理し判断したことが、承認執行の重要な根拠となった。日本企業がベトナム企業との間で仲裁条項を含む契約を締結する際には、指定する仲裁機関の仲裁規則が反対請求について明確な規定を有しているかを事前に確認することが重要である。

第三に、外国仲裁判断の承認執行手続における翻訳文書の重要性である。ベトナムでは、外国語で作成された仲裁判断は認証翻訳文を添付して提出する必要があり、相手方当事者はこの翻訳文に対して異議を述べる機会を有する。本件が示すように、この段階で異議を述べなかった場合、後の段階で手続の適正性を争うことは困難となる可能性がある。したがって、日本企業がベトナムにおける外国仲裁判断承認執行手続の被申立人となった場合には、提出された翻訳文書を専門的に検討し、必要に応じて適時に異議を述べることが重要である。

結語

最高人民裁判所決定第09/2024/KDTM-GĐTは、ベトナムにおける外国仲裁判断承認執行法制が国際標準に沿った方向で発展していることを示す重要な判例である。ベトナムで事業を展開する日本企業にとって、国際商事紛争の予防および解決は事業継続の重要な要素であり、本判決が示す法的原則を理解することは不可欠である。国際訴訟および外国判決・仲裁判断の承認執行に関する具体的な法的助言が必要な場合は、ベトナム法に精通した専門家にご相談されることをお勧めいたします。Unilawは、日本企業のベトナムにおける国際紛争解決を専門的にサポートしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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