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2025年10月、ベトナムの最高人民法院ダナン市控訴裁判所は、建設工事保険契約をめぐる重要な紛争事件(判決番号05/2025、2025年9月26日付)を審理し、総合株式会社Bに対し、L1 C有限責任会社へ161億ドン(約16億1千万円相当)の賠償を命じる判決を下しました。この事件は、ベトナムにおける商業保険分野、特に建設工事保険契約の紛争解決における裁判所の判断基準を明確に示すものであり、損保ジャパンをはじめとする日系保険会社がベトナムで事業を展開する際に直面し得る法的リスクを理解する上で極めて重要な先例となっています。
本件において、控訴審裁判所は「2015年民事訴訟法」第300条に基づき、一審判決(ダナン市人民法院2025年6月20日付判決番号08/2025/KDTM-ST)を修正し、当事者間の合意を認定しました。裁判所は、総合株式会社Bの代理人とL1 C有限責任会社の代理人が控訴審公判において自発的に和解合意に至ったこと、その合意内容が法律の禁止規定に違反せず、社会道徳にも反しないことを確認した上で、和解内容を判決として確定させています。
ベトナム保険法制における建設工事保険契約の法的枠組み
ベトナムにおける建設工事保険契約は、主に「2022年保険事業法」および「2015年民法典」第XXI章第4節(第580条から第608条)に規定される保険契約に関する条項によって規律されています。これらの法令は、保険契約の成立要件、当事者の権利義務、保険金支払義務の発生条件、免責事由、紛争解決手続等を詳細に定めており、日系保険会社がベトナム市場で適切にリスク管理を行うためには、これらの法的枠組みを正確に理解することが不可欠です。
「2015年民法典」第357条および第468条第2項は、金銭債務の履行遅延に関する利息について規定しており、本件判決においても、総合株式会社Bが判決確定後に賠償金の支払いを遅延した場合、L1 C有限責任会社が執行申立を行った日から完済まで、遅延利息を支払う義務が明記されています。この規定は、保険会社が保険金支払義務を負った場合の遅延損害金の計算基準として実務上重要な意味を持ちます。
控訴審における和解合意の法的効力と実務上の意義
本件の特徴的な点は、控訴審段階において当事者間で和解が成立し、裁判所がそれを判決として確定させた点にあります。ベトナム「2015年民事訴訟法」第300条は、控訴審裁判所が当事者間の和解合意を認定し、その内容が法令および公序良俗に反しない場合、一審判決を修正して和解内容を判決とすることを認めています。
本件では、当初の請求額から最終的に161億ドンという具体的な賠償額で合意が成立しましたが、この金額決定に至るまでには、保険契約の約款解釈、保険事故の認定、因果関係の立証、損害額の算定など、複数の法的争点が検討されたと推察されます。訴訟費用の配分についても、一審商事訴訟費用として総合株式会社Bが126,430,096ドン、L1 C有限責任会社が116,392,052ドン(既納付分66,216,390ドンを控除後、50,175,662ドンを追加納付)を負担し、さらに総合株式会社BがL1 C有限責任会社に訴訟費用として15,000,000ドンを返還する義務を負うことが判決で明示されています。控訴審費用2,000,000ドンは総合株式会社Bが全額負担しました。
日系保険会社に求められる法的対応とリスク管理
損保ジャパンのような日系保険会社がベトナムで建設工事保険を含む各種保険商品を提供する際には、ベトナム法に基づく契約書作成、約款の適法性確保、保険事故発生時の迅速な調査・査定体制の構築が求められます。本件のような高額賠償事案では、初期段階での法的評価の正確性が最終的な損失額を大きく左右するため、ベトナム法に精通した顧問弁護士による継続的な法的サポートが不可欠となります。
特に重要なのは、紛争が訴訟に発展した場合の対応戦略です。本件では控訴審段階で和解が成立しましたが、これは双方にとって訴訟の長期化リスクを回避し、予測可能な形で紛争を終結させる合理的な選択であったと評価できます。日系保険会社としては、訴訟提起前の交渉段階から、和解の可能性を含めた多角的な紛争解決戦略を検討することが重要です。
Unilawが提供する日系保険会社向け法務サポート
Unilawは、ベトナム法に精通した弁護士チームにより、損保ジャパンをはじめとする日系保険会社に対し、包括的な法務サポートを提供しています。建設工事保険契約に関する紛争予防から、実際に紛争が発生した場合の訴訟代理まで、保険事業のあらゆる局面において専門的な法的助言を行っています。
具体的なサービス内容としては、保険約款のベトナム法適合性審査、保険契約書のドラフティングおよびレビュー、保険事故発生時の初動対応アドバイス、保険金支払可否の法的評価、被保険者との交渉サポート、訴訟・仲裁手続における代理業務などが含まれます。本件判決のような先例分析に基づき、将来のリスクを予測し、予防的な法的対策を講じることも重要な業務の一環です。
保険事業は高度に専門的かつ規制の厳しい分野であり、「2022年保険事業法」に基づく免許取得・維持、財務健全性基準の遵守、商品認可手続、販売規制への対応など、事業運営全般にわたって法令遵守が求められます。Unilawは日本語対応可能な弁護士により、日系保険会社の皆様が言語の壁なく正確な法的助言を受けられる体制を整えています。
建設工事保険に限らず、自動車保険、火災保険、貨物保険、賠償責任保険など、各種保険商品に関する法的課題について、実務経験に基づいた実践的なアドバイスを提供しており、保険金不払い訴訟や契約解釈をめぐる紛争においても、ベトナム裁判所の判断傾向を踏まえた効果的な訴訟戦略を立案します。
保険契約紛争における和解の法的要件と裁判所の認定基準
本件判決において、ダナン市控訴裁判所は「2015年民事訴訟法」第300条を適用し、当事者間の和解合意を認定しました。同条は、控訴審裁判所が当事者の自発的な和解合意を審査し、その内容が「法律の禁止規定に違反せず」かつ「社会道徳に反しない」場合に、一審判決を修正して和解内容を判決として確定することを認めています。本件では、総合株式会社Bの代理人とL1 C有限責任会社の代理人が控訴審公判において161億ドンの賠償額で合意に至り、裁判所はこの合意が自発的であること、法令違反がないこと、公序良俗に反しないことの3要件を満たすと認定しました。
実務上重要な点は、裁判所が和解合意の「自発性」を厳格に審査している点です。本判決文では「đại diện theo ủy quyền của Tổng Công ty cổ phần B và đại diện theo ủy quyền của Công ty TNHH L1 C thỏa thuận được với nhau về việc giải quyết vụ án và xét thỏa thuận của đại diện 2 Công ty là tự nguyện」(総合株式会社Bの代理人とL1 C有限責任会社の代理人が紛争解決について合意し、両社代理人の合意が自発的であることを審査した)と明記されており、代理人の合意が当事者本人の真意に基づくものであることを裁判所が確認していることが分かります。日系保険会社が訴訟代理人を通じて和解交渉を行う際には、代理権限の明確化と本社への適切な報告体制が不可欠です。
保険金支払遅延に対する遅延利息の法的根拠と実務上の計算方法
本判決は、総合株式会社Bが判決確定後に賠償金161億ドンの支払いを遅延した場合、「2015年民法典」第357条および第468条第2項に基づく遅延利息の支払義務を明確に定めています。判決文によれば、「Kể từ ngày Công ty TNHH L1 C có đơn yêu cầu thi hành án đối với khoản tiền được bồi thường trên mà Tổng Công ty cổ phần B chậm trả thì phải trả lãi tính trên số tiền chậm trả」(L1 C有限責任会社が執行申立を行った日から総合株式会社Bが支払いを遅延した場合、遅延金額に対して利息を支払わなければならない)とされており、執行申立日を起算点とする明確な基準が示されています。
「2015年民法典」第357条は金銭債務の履行について一般原則を定め、第468条第2項は具体的な遅延利息の計算方法を規定しています。実務上、ベトナム国家銀行が公表する基準金利に基づいて遅延利息率が決定されるため、保険会社は判決確定後の迅速な支払いが財務上極めて重要となります。本件のように161億ドンという高額の賠償金の場合、数カ月の支払遅延でも遅延利息が数億ドン規模に達する可能性があり、損保ジャパンをはじめとする日系保険会社は、判決確定後の資金手当てを事前に準備しておく必要があります。
訴訟費用の負担配分に関する裁判所の判断基準
本判決では訴訟費用の詳細な配分が示されており、一審商事訴訟費用として総合株式会社Bが126,430,096ドン、L1 C有限責任会社が116,392,052ドンを負担することが確定しました。L1 C有限責任会社は既に66,216,390ドンを仮納付していたため、追加で50,175,662ドンを納付する義務があります。さらに、総合株式会社BはL1 C有限責任会社に対し訴訟費用として15,000,000ドンを返還する義務を負い、控訴審費用2,000,000ドンは総合株式会社Bが全額負担しました。
この費用配分は、和解により最終的な賠償額が確定したことを受けて、双方の主張の妥当性と訴訟の経緯を総合的に考慮して決定されたものと考えられます。ベトナムの民事訴訟実務では、当事者の主張が認められた割合に応じて訴訟費用が按分されることが一般的ですが、和解事案では裁判所が公平性の観点から独自の判断を示す場合があります。日系保険会社としては、訴訟提起時から訴訟費用の見積もりを行い、和解交渉において訴訟費用の負担も含めた総合的なコスト評価を行うことが重要です。
建設工事保険契約における免責条項の解釈と立証責任
建設工事保険契約紛争では、保険約款に定められた免責事由の該当性が主要な争点となることが多く、「2015年民法典」第580条から第608条に規定される保険契約の一般原則に基づいて解釈されます。特に第589条は保険者の免責事由について定めており、保険事故が被保険者の故意または重大な過失によって生じた場合、保険者は保険金支払義務を免れることができます。ただし、保険者が免責を主張する場合、その立証責任は保険者側にあり、契約締結時に免責条項を明確に説明したこと、および実際に免責事由に該当する事実があったことの両方を証明する必要があります。
本件のような建設工事保険紛争では、工事現場での事故原因の特定が技術的に複雑であり、専門家の鑑定意見が重要な証拠となります。損保ジャパンをはじめとする日系保険会社は、保険事故発生直後から専門技術者による現場調査を実施し、写真・動画記録、関係者の証言、契約書類の保全など、証拠収集を組織的に行う体制を整えておく必要があります。また、免責条項の適用を主張する場合でも、被保険者との関係維持や企業イメージへの影響を考慮し、訴訟以外の紛争解決手段も検討することが実務上は重要です。
損保ジャパンに対するUnilawの総合的リーガルサポート
Unilawは、本判決のような建設工事保険紛争の実例分析に基づき、損保ジャパンをはじめとする日系保険会社に対し、紛争予防から訴訟対応まで一貫したリーガルサポートを提供しています。ベトナムにおける保険事業は「2022年保険事業法」による厳格な規制の下で運営されており、契約締結から保険金支払い、紛争解決に至るまで、各段階で適切な法的対応が求められます。
特に高額な建設工事保険契約では、契約締結時の約款審査、保険事故発生時の迅速な法的評価、訴訟リスクの分析、和解交渉戦略の立案など、専門的かつ実務的な法律サービスが不可欠です。Unilawの日本語対応可能な弁護士チームは、ベトナム法の正確な理解と日本のビジネス慣行への深い知見を併せ持ち、損保ジャパンのような日系保険会社が直面する法的課題に対し、実効性の高いソリューションを提供します。
ベトナムにおける保険事業の法的リスク管理や紛争対応について、具体的なご相談がございましたら、Unilawまでお気軽にお問い合わせください。個別の事案に応じた専門的なアドバイスをご提供いたします。