株式譲渡の弁護士費用とは?費用の相場と計算方法を解説 – Unilaw
2025年8月、ホーチミン市の最高人民法院控訴裁判所は、株式譲渡契約における遅延損害金の請求を巡る重要な判決(判決番号05/2025/KDTM-PT、2025年8月22日付)を下しました。この事案では、ベトナム企業間で3兆2,500億ドン(約325億円相当)という大規模な持分譲渡取引が行われましたが、譲受人による支払い遅延を理由に、譲渡人側が約1,049億ドンの遅延利息を請求しました。しかし裁判所は、契約条項の解釈と双方の契約違反を詳細に検討した結果、この請求を全面的に棄却しています。
この判決は、株式譲渡や持分譲渡における弁護士の役割の重要性を改めて浮き彫りにしています。契約書の文言一つ、履行過程での対応一つが、数十億円規模の請求の成否を左右するからです。では、このような重要な株式譲渡取引において、弁護士費用はどのように設定され、何を基準に計算されるのでしょうか。
株式譲渡における弁護士の役割と法的根拠
ベトナムにおける株式譲渡は、2020年企業法(有限責任会社における持分譲渡については第51条~第53条、株式会社における株式譲渡については第119条~第126条)および2015年民法(第117条~第132条の民事取引に関する規定、第405条~第415条の売買契約に関する規定)によって規律されています。
上記の判決事案では、2018年5月15日に原則合意書(契約番号01/HĐCNV18)が締結され、その後2度の補足合意(2018年8月3日付補足合意01号、同年8月7日付補足合意02号)によって、最終的に100%の持分譲渡、総額3兆2,500億ドンという取引内容に変更されました。このような複雑な交渉過程において、弁護士は以下の重要な役割を担います。
第一に、契約条項の起草と審査です。本件では、支払い方法が3回に分割され、第1回は手付金として1,000億ドン(2018年5月21日に支払済み)、第2回は2018年8月7日から30日以内に2,000億ドン、第3回は同日から180日以内に5,230億3,700万ドンと定められました。加えて、譲受人は譲渡人がS1銀行に対して負っていた2兆4,269億6,300万ドンの債務を代わりに弁済する義務も負いました。
第二に、契約違反時の責任条項の明確化です。原則合意書第3条1項(ii)および第9条2項には、「譲受人が手付金支払後、所定の期限内に持分譲渡の対価を支払い続けない場合、譲渡人が合理的な期限を延長してもなお支払わないときは、譲受人は支払済みの手付金を失う。譲渡人は譲受人に対し、手付金を除く受領済みの金員を返還し、譲受人は持分を譲渡人に返還する」という明確な規定がありました。
裁判所はこの条項を厳格に解釈し、遅延利息の支払いに関する合意が存在しないことを確認しました。譲受人は確かに第3回支払い(2019年2月7日が期限)を遅延し、実際には2019年6月26日から2022年3月11日にかけて分割して支払いましたが、譲渡人側は期限経過後も返金を求めず、逆に継続的に支払いを受け入れました。この行為は、2015年民法第351条3項に基づき、譲渡人が支払期限の延長に黙示的に合意したものと解釈されました。
さらに重要なのは、裁判所が譲渡人側の契約違反も認定した点です。原則合意書第2条2項は「譲渡人は、持分譲渡手続き前に、会社に税金債務その他の国家機関に対する財政的義務が一切残存しないことを保証する」と定めていましたが、2021年12月1日付のĐ省税務局通知(番号9127/TB-CTDON)により、会社には2019年12月31日時点で322億5,090万5,969ドンの未納税金・罰金・延滞金が存在することが判明しました。
また、同条項は「譲渡人は銀行債務、取引先への債務その他一切の第三者への債務を清算済みであり、会社の引渡し時点で譲受人はいかなる債務も負担しない」とも規定していましたが、譲渡人は手付金受領時(2018年5月21日)に、会社T3が既にS1銀行から訴訟を提起され、2017年9月6日付判決(番号18/2017/QĐST-KDTM、第6区人民法院)により敗訴していた事実を開示していませんでした。この判決に基づき、第6区民事執行局は2017年12月19日付決定(番号69/QĐ-CCTHADS)により、S1銀行に対し会社T3が所有する112筆の土地使用権を含む担保財産の競売を認めていました。
さらに原則合意書第3条2項(iv)は「譲渡人は、受領した金員を直ちに財政的義務の履行に充て、土地およびプロジェクトが清浄(抵当権その他の財政的義務が一切ない状態)であり、かつ会社が100%清浄(会社の事業活動、法務、労務に関連するいかなる財政的・法的義務も残存しない状態)であることを保証する」と定めていましたが、2019年10月31日付の会議録(会社P〔譲受人が会社T3を合併した後の会社〕とDương Văn B氏との間)によれば、用地引渡しがなお完了していませんでした。
これらの譲渡人側の重大な契約違反を踏まえ、裁判所は2015年民法第351条3項(「義務を負う者は、義務の不履行が完全に権利を有する者の過失によるものであることを証明した場合、民事責任を負わない」)および2005年商法第294条1項(c)(「一方の違反行為が完全に他方の過失による場合」は責任を免除される)を適用し、譲受人の支払遅延は譲渡人の契約違反に起因するものと判断しました。
このように複雑な法律関係においては、契約締結段階から履行、紛争解決に至るまで、専門的な法的助言が不可欠です。特に大規模なM&A取引では、デューデリジェンス、契約交渉、リスク評価、紛争予防の各段階で弁護士が果たす役割は極めて大きく、それに応じて弁護士費用も
変動していく可能性があります。
株式譲渡における弁護士費用の構成要素
ベトナムにおける株式譲渡取引に関する弁護士費用は、通常、以下の要素で構成されます。第一に、デューデリジェンス費用です。上記の判決事案においても、譲受人である被告D1氏は、譲渡人側が会社T3の税務債務を清算していなかった事実(2021年12月1日付のĐ省税務局通知番号9127/TB-CTDONにより、2019年12月31日時点で322億5,090万5,969ドンの未納税金・罰金・延滞金が判明)や、S1銀行への債務問題(2017年9月6日付判決番号18/2017/QĐST-KDTMにより会社T3が敗訴し、112筆の土地使用権が競売対象となっていた事実)を事前に把握できませんでした。適切なデューデリジェンスがあれば、これらの重大なリスクを契約締結前に発見できた可能性があります。大規模取引では、この段階だけで数千万円から数億円規模の費用が発生することも珍しくありません。
第二に、契約書起草・交渉費用です。本件では、2018年5月15日の原則合意書から、同年8月3日の補足合意01号、8月7日の補足合意02号と、複数回の契約修正が行われ、最終的に取引総額が2兆6,000億ドンから3兆2,500億ドンへと変更されました。このような複雑な交渉過程における法的支援は、取引金額の0.5%から2%程度が相場とされています。
第三に、紛争解決費用です。本件のように訴訟に発展した場合、一審から控訴審まで数年にわたる法的対応が必要となります。ホーチミン市最高人民法院控訴裁判所による2025年8月22日付判決番号05/2025/KDTM-PTに至るまで、双方の弁護士は膨大な法的主張と証拠の準備を行いました。
法律規定と実際の適用の比較分析
2015年民法第351条第3項は「義務を負う者は、義務の不履行が完全に権利を有する者の過失によるものであることを証明した場合、民事責任を負わない」と規定しています。また、2005年商法第294条第1項(c)は「一方の違反行為が完全に他方の過失による場合」には責任を免除されると定めています。本件において、裁判所はこれらの条項を厳格に適用し、譲受人の支払遅延が譲渡人の契約違反に起因すると判断しました。
具体的には、原則合意書第2条第2項が「譲渡人は、持分譲渡手続き前に、会社に税金債務その他の国家機関に対する財政的義務が一切残存しないことを保証する」と明記していたにもかかわらず、譲渡人は2019年12月31日時点で322億ドン超の未納税があり、この義務違反が認定されました。さらに同条項は「譲渡人は銀行債務、取引先への債務その他一切の第三者への債務を清算済み」と規定していましたが、実際には2018年5月21日の手付金受領時点で、既に会社T3がS1銀行から訴訟提起され(2017年9月6日判決)、土地使用権の競売決定(2017年12月19日付決定番号69/QĐ-CCTHADS)まで下されていた事実を開示していませんでした。
裁判所は、2015年民法第357条および同法第468条第2項に基づく遅延利息請求権の成否について、契約条項の文言を詳細に検討しました。原則合意書第3条第1項(ii)および第9条第2項は、支払遅延時の救済手段として「譲受人が手付金を失う」ことのみを規定し、遅延利息の支払いについては一切言及していませんでした。さらに、譲受人が2019年2月7日の期限経過後も支払いを継続し(2019年6月26日から2022年3月11日まで分割払い)、譲渡人がこれを全額受領し続けた行為は、2015年民法第351条第3項に基づき、譲渡人が支払期限の延長に黙示的に合意したものと解釈されました。つまり、法律上は遅延利息請求権が認められる余地があったとしても、当事者間の契約条項と実際の履行態様から、その権利は放棄されたと判断されたのです。
この判決は、2020年企業法第51条から第53条(有限責任会社における持分譲渡)および第119条から第126条(株式会社における株式譲渡)が定める手続的要件だけでなく、2015年民法が定める実体的権利義務関係の詳細な理解が不可欠であることを示しています。特に大規模取引では、契約書の文言が数十億円単位の請求の成否を左右するため、専門的な法的助言なしには重大なリスクを負うことになります。
弁護士費用の計算方法と相場
ベトナムにおける株式譲渡の弁護士費用は、一般的にタイムチャージ方式、固定報酬方式、成功報酬方式、またはこれらの組合せで設定されます。タイムチャージの場合、シニア弁護士で1時間あたり200米ドルから500米ドル、固定報酬の場合は取引総額の0.5%から3%程度が目安とされています。本件のような3兆ドン超の取引では、総合的な法的支援に数億円規模の費用が発生することも想定されます。
まとめ
株式譲渡における弁護士費用は、取引の規模や複雑性、紛争リスクによって大きく変動しますが、適切な法的支援を受けることで、本件のような巨額請求の棄却といった重大な損失を回避できる可能性が高まります。ベトナムにおける株式譲渡取引をご検討の際は、Unilawの専門チームまでお気軽にご相談ください。個別の状況に応じた具体的なアドバイスをご提供いたします。